自殺企図から, 有機リン性農薬服飲後, 心刺傷したが救命しえた症例
22歳, 女性. 身長160cm, 体重50kg. 既往歴:16歳時より, うつ病と診断され入院および投薬を繰り返していた. 経過:約1カ月前より, うつ病の悪化を指摘され薬量を増量されたが病状は改善しなかった. 受傷時, 患者は家族によって浴室で倒れているところを発見され, 直ちに救急外来に搬入された. 患者は自殺企図から有機リン性農薬を服飲したあとに, 右手根部, 右頸部および左前胸部を果物ナイフにて刺傷していた. 搬入時所見:血圧146/97mmHg, 心拍数107/min, 体温33.1℃, 呼吸数30/min, 意識レベルはIII-3-9方式にて30であった. 右手, 右頸部の創部は...
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Zusammenfassung: | 22歳, 女性. 身長160cm, 体重50kg. 既往歴:16歳時より, うつ病と診断され入院および投薬を繰り返していた. 経過:約1カ月前より, うつ病の悪化を指摘され薬量を増量されたが病状は改善しなかった. 受傷時, 患者は家族によって浴室で倒れているところを発見され, 直ちに救急外来に搬入された. 患者は自殺企図から有機リン性農薬を服飲したあとに, 右手根部, 右頸部および左前胸部を果物ナイフにて刺傷していた. 搬入時所見:血圧146/97mmHg, 心拍数107/min, 体温33.1℃, 呼吸数30/min, 意識レベルはIII-3-9方式にて30であった. 右手, 右頸部の創部は浅かったが左胸部刺創からは, 呼吸に応じた空気の排出が認められた. 血圧および脈圧は保たれていたが, 胸部X-P所見にて心タンポナーデを疑い緊急に左開胸により右室心筋の縫合止血術を行った. 麻酔方法はGO-フェンタニールとしドーパミン1~3μg/kg/min持続点滴した. 術中, 循環動態には大きな変動はなく手術は終了, 気管内挿管のまま患者をICUに搬入し, 以後人工呼吸器管理とした. ICU入室2日目より出血傾向, 血小板数の減少, 血清FDP値の上昇が認められたためDICを疑い新鮮凍結血漿, 濃厚血小板, メシル酸ガベキサートを投与した. また3日目よりは動脈血ガス所見にてPa_O2 の低下, 白血球数の上昇がみられるとともに, 胸部X-P所見にて間質性肺炎像を示した. 抗生剤およびステロイドの大量投与により治療を行った結果, 以後順調に回復し, 16日目に抜管, 40日目に退院となった. 本症例は, 出血性ショックや外傷による循環不全, 手術侵襲などのさまざまなストレスが契機となり, DICならびに間質性肺炎を疑わせるARDSが発症したと考えられた. ARDSの治療において, 副腎皮質ステロイドの有効性は確立していませんが, 今回私たちは, 急速に進行した肺病変に対して, 副腎皮質ステロイドが有効であったと思われる症例を経験した. |
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ISSN: | 0288-4348 |