機械的脳損傷マウス海馬切片における虚血性細胞内Ca2+ 上昇

われわれは, 脳に人工的に機械的損傷を負荷したマウスは非損傷マウスに比較して脳虚血後の生存率が高くなることを見い出し, 損傷部位近傍組織に抗虚血機構が発動することを示唆してきた. そこで, この抗虚血作用の機構を細胞レベルで検索するため, 機械的損傷後のマウス海馬切片に低酸素+無グルコース負荷し, 虚血性細胞障害の最終共通路としての細胞内遊離Ca^2+ の上昇について検討した. マウスを用い, 25G皮下針にて海馬に損傷を負荷し, 損傷3日, 7日, 14日後に厚さ350μmの海馬切片を作製して低酸素+無グルコース負荷による海馬切片細胞内Ca^2+ 濃度の変化をFura-2蛍光画像測定法により...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Hauptverfasser: 藤原直士, 本多忠幸, 阿部崇, 下地恒毅
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:われわれは, 脳に人工的に機械的損傷を負荷したマウスは非損傷マウスに比較して脳虚血後の生存率が高くなることを見い出し, 損傷部位近傍組織に抗虚血機構が発動することを示唆してきた. そこで, この抗虚血作用の機構を細胞レベルで検索するため, 機械的損傷後のマウス海馬切片に低酸素+無グルコース負荷し, 虚血性細胞障害の最終共通路としての細胞内遊離Ca^2+ の上昇について検討した. マウスを用い, 25G皮下針にて海馬に損傷を負荷し, 損傷3日, 7日, 14日後に厚さ350μmの海馬切片を作製して低酸素+無グルコース負荷による海馬切片細胞内Ca^2+ 濃度の変化をFura-2蛍光画像測定法により検索し, 損傷部位近位と遠位について比較した. 頭皮切開のみのSham群ではCA1領域錐体細胞層の端から150, 300, 450, 600, 750, 900μm離れた位置およびおのおのに隣接する起始層と放射層に20μm×20μmのウインドウを設定し, また, 損傷海馬切片(Injury群)では損傷部位からCA3側に150, 300, 450μm離れた位置および対側に150, 300μm離れた位置の各層について, Sham群と同様のウインドウを設定し, 細胞内Ca^2+ 濃度変化を測定した. 低酸素+無グルコース負荷10分による負荷前に対する細胞内遊離Ca^2+ 濃度の上昇はSham群では各層ともウインド位置による差異はないのに対し, Injury群では損傷後3日, 7日で損傷部近位の細胞内Ca^2+ 濃度上昇が遠位より小さい傾向が認められた. また, 損傷後3日において, 損傷部位を境としてCA3と対側では細胞内遊離Ca^2+ 濃度の上昇が有意に抑制された. 損傷後14日では損傷部との遠位による細胞内遊離Ca^2+ 濃度上昇に有意差は認められなかった. 海馬損傷後, 3日と7日では損傷部近位では遠位に比べ細胞内遊離Ca^2+ の上昇が抑制されることより, 損傷部位から抗虚血因子が生成され低酸素+無グルコースに対する抵抗性が高まっていることが示唆される. また, 損傷によるシナプス前神経線維の切断がその遠位における細胞内遊離Ca^2+ 濃度上昇の抑制に関与していることも考えられる.
ISSN:0288-4348