麻酔導入前心停止の1例

麻酔導入の直前, 不測の心停止を来し, 蘇生に苦労したが, 神経学的後遺症を残さず回復した1例を報告し, 若干考察を加えた. 33歳女性, 身長158cm, 体重48kg. 約2年前左乳癌の手術を受け, 今回その腰椎転移の疑いで腰椎生検を予定. なお, 前回術後から今回入院前まで経口避妊薬を内服していた. 患者は特に自覚症状なく, 術前検査所見で特記すべきものはない. 当日, 腰椎のマーキング実施後, アタラックスP50mg, アトロピン0.5mg, ザンタック50mg前投薬, on callの症例であったため, 直ちに腹臥位のまま手術室へ搬入された. 患者を手術台に移すのに, 体位を仰臥位と...

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Hauptverfasser: 河内山敬二, 加川正, 大岩悦郎, 井尾和雄, 印南比呂志, 河口太平, 岡田和夫
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:麻酔導入の直前, 不測の心停止を来し, 蘇生に苦労したが, 神経学的後遺症を残さず回復した1例を報告し, 若干考察を加えた. 33歳女性, 身長158cm, 体重48kg. 約2年前左乳癌の手術を受け, 今回その腰椎転移の疑いで腰椎生検を予定. なお, 前回術後から今回入院前まで経口避妊薬を内服していた. 患者は特に自覚症状なく, 術前検査所見で特記すべきものはない. 当日, 腰椎のマーキング実施後, アタラックスP50mg, アトロピン0.5mg, ザンタック50mg前投薬, on callの症例であったため, 直ちに腹臥位のまま手術室へ搬入された. 患者を手術台に移すのに, 体位を仰臥位とし, 血圧計心電計などの装着中に, 患者は, 胸内苦悶を訴え錯乱状態となり, 意識を喪失した. 心電図上初めVTを認めたが, 体動で判読不能のうちに平坦となっていた. 直ちに(10°20頃)閉胸心マッサージ開始, ついで気管内挿管, 純O_2 による人工呼吸を続けた. 相前後して, リドカイン(50~100mg bolus)数回, エピネフリン(0.5~1mg bolus)10数回投与, カウンターショック6回適用などが実施されたが, 持続的で有効な心拍が再開せず, 10°15開胸に踏み切った. 開胸マッサージ数回以内に心拍再開し, 心電図も洞調律に戻り, まもなく血圧も回復安定したので, 12°25閉胸操作を終えた. その後意識も回復したので, 集中治療室に移し, 当夜から翌朝にかけては比較的円滑に経過した. 第1病日, 11時頃, 14時頃, 20時頃の3回にわたり, いずれもVTが先行する心停止を来し, 非開胸的蘇生法により回復した. その後患者は, 神経学的後遺症を残さず退院できた. 本症例の心停止の病因については, 肺塞栓症が最も疑われたが, 確証が得られず, 先天性QT延長症候群も強く示唆された. 本症例のような手術室内での心停止で, 非開胸の蘇生法がなかなか奏効しない時は, 早期に開胸に踏み切るがよいとの感を強くした.
ISSN:0288-4348