ヒドロキシエチルスターチ投与中出血傾向を来した1症例

肝硬変による血小板減少や凝固因子の欠乏による出血傾向は, 手術中の大量出血の原因となり得る重要な術前合併症の1つである. われわれは術中の大量出血に対しヒドロキシエチルスターチ(ヘスパンダーR)を投与し, 術中に出血傾向を来し手術翌日に死亡した肝硬変の1症例を経験したので報告する. 患者は63歳の女性で, 肝硬変による食道静脈瘤および脾機能亢進症の診断にて胃噴門側切除術および摘脾術を予定された. 既往歴は63歳時の第11胸椎圧迫骨折で, この時に肝硬変を指摘され, 今回の手術を受けることとなった. 術前検査では貧血(赤血球328万, ヘモグロビン10.5g/dl, ヘマトクリット31.4%),...

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Hauptverfasser: 松本早苗, 浅井隆, 田口仁士, 内田盛夫
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:肝硬変による血小板減少や凝固因子の欠乏による出血傾向は, 手術中の大量出血の原因となり得る重要な術前合併症の1つである. われわれは術中の大量出血に対しヒドロキシエチルスターチ(ヘスパンダーR)を投与し, 術中に出血傾向を来し手術翌日に死亡した肝硬変の1症例を経験したので報告する. 患者は63歳の女性で, 肝硬変による食道静脈瘤および脾機能亢進症の診断にて胃噴門側切除術および摘脾術を予定された. 既往歴は63歳時の第11胸椎圧迫骨折で, この時に肝硬変を指摘され, 今回の手術を受けることとなった. 術前検査では貧血(赤血球328万, ヘモグロビン10.5g/dl, ヘマトクリット31.4%), 白血球減少(2, 100)および血小板減少(39, 000)を来しており, 止血・凝固検査では出血時間3分, 部分トロンボプラスチン時間36秒と正常範囲であったがプロトロンビン時間52%, フィブリノーゲン値89g/dlと低下が見られた. 血中ICG停滞時間の延長も認められたが特に治療を行わずに手術を開始した. 術中はNLA+笑気, 酸素, エンフルレンにて維持し, 摘脾術終了までの出血量は355mlであったが, 噴門側切除中に2, 120ml出血した(合計2, 475ml). 術前の準備血液の濃厚赤血球6単位および新鮮凍結血漿とを輸血したが血圧低下と頻脈が顕著となった. 輸血用血液の追加を依頼したが, 血液の到着を待つ間に更に血圧低下が進行したため循環動態を維持する目的でヘスパンダーR900mlを投与した. このころより出血傾向が現れ, 出血点不明の出血が持続した. 手術終了時の血小板数は12, 000であった. 術後新鮮血および濃厚血小板輸血を行ったが患者の出血は持続し, 手術の翌日心停止により死亡した. 本症例のような出血傾向のある肝硬変患者に対しては術前のより慎重な評価と準備を行い, 対処することが望ましい.
ISSN:0288-4348