昏睡患者の心電図R-R間隔変動

不整脈のない各種昏睡患者で, 長時間連続して心電図R-R間隔の変動をモニターした. R-R間隔変動の指標に, 従来からの変動係数と, 呼吸性変動を主に検出する乖離率を用いた. 測定は15分おきに行い, 20~57時間継続した. 46歳, 男性. 頭部を強打し脳幹部挫傷で脳死となり, 人工呼吸と昇圧剤で維持していた. 入院直後から変動係数, 乖離率とも低値のままであった. 23歳, 男性. トリアゾラム7.5mgを乱用し意識消失, 服用後8時間で意識は回復するが, 見当識が悪く, 不穏状態であった. 更に6時間経過後, 意識レベル低下があり, その後再び意識清明となる. 初め, 変動係数, 乖離...

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Hauptverfasser: 高橋伸之, 東兼充, 阿部洋士, 柳下芳寛
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:不整脈のない各種昏睡患者で, 長時間連続して心電図R-R間隔の変動をモニターした. R-R間隔変動の指標に, 従来からの変動係数と, 呼吸性変動を主に検出する乖離率を用いた. 測定は15分おきに行い, 20~57時間継続した. 46歳, 男性. 頭部を強打し脳幹部挫傷で脳死となり, 人工呼吸と昇圧剤で維持していた. 入院直後から変動係数, 乖離率とも低値のままであった. 23歳, 男性. トリアゾラム7.5mgを乱用し意識消失, 服用後8時間で意識は回復するが, 見当識が悪く, 不穏状態であった. 更に6時間経過後, 意識レベル低下があり, その後再び意識清明となる. 初め, 変動係数, 乖離率とも低値だったが, 意識の回復とともに上昇した. 不穏状態の時期に比べ, あとで見当識が良くなったときの方が, 変動係数, 乖離率ともに高い印象を受けた. 47歳, 男性. アルコール性肝硬変で昏睡となる. 呼吸管理, 肝庇護療法により, 全身状態は改善した. 第1病日は, 意識の回復は緩やかで, 変動係数, 乖離率とも低いままであったが, 第2病日は, 前日に比べ, 意識レベルの上昇に伴って変動係数, 乖離率ともに上昇してきた. 58歳, 女性. 眼瞼下垂を初発とする小脳腫瘍で開頭術となる. 術直後は嗜眠状態で, 9時間後, 意識レベルの低下がみられたが, 数時間で覚醒した. 嗜眠状態の時期は, 変動係数, 乖離率とも, 覚醒後に比べると低い. 意識障害患者はその程度に応じてR-R間隔変動は減少している. しかし, 特に脳死患者では, 各種カテコラミン投与のためにR-R間隔の変動が修飾されることも考えられるが, 症例1ではカテコラミン投与量と, 変動係数との間には, 関連はなかった. 嗜眠状態あるいは見当識障害の有無により, R-R間隔の変動に違いがある症例もみられた. R-R間隔の変動は自律神経機能の評価だけでなく, 意識レベルを客観的に評価できる可能性もある.
ISSN:0288-4348