筋弛緩薬のリバース時に心停止を来した硬膜外併用全身麻酔の1症例

硬膜外麻酔を併用した全身麻酔からの覚醒時に筋弛緩薬のリバースとしてネオスチグミンと硫酸アトロピンを投与した直後, 心停止を来した症例を経験したので報告する. 57歳, 女性, 胆石症の診断のもと胆嚢摘出術が予定された. 既往歴として27年前に肺結核にて右肺上葉切除術, 2年前に大細胞癌にて右肺全摘出術, 1年前に咽頭肉芽にて同摘出術をいずれも全身麻酔下に受けたが, 麻酔による特記すべき異常反応は認められなかった. 術前検査では, 肺機能検査において%VC 41.2%, FEV 1%99.1%, 動脈ガス分析でpH 7.37, Pa_CO2 55.3mmHg, Pa_O2 79.9mmHg, B...

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Hauptverfasser: 斉藤仁, 篠村徹太郎, 平林由広, 瀬尾憲正, 小野寺文雄, 赤澤訓, 粕田晴之, 清水禮壽
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:硬膜外麻酔を併用した全身麻酔からの覚醒時に筋弛緩薬のリバースとしてネオスチグミンと硫酸アトロピンを投与した直後, 心停止を来した症例を経験したので報告する. 57歳, 女性, 胆石症の診断のもと胆嚢摘出術が予定された. 既往歴として27年前に肺結核にて右肺上葉切除術, 2年前に大細胞癌にて右肺全摘出術, 1年前に咽頭肉芽にて同摘出術をいずれも全身麻酔下に受けたが, 麻酔による特記すべき異常反応は認められなかった. 術前検査では, 肺機能検査において%VC 41.2%, FEV 1%99.1%, 動脈ガス分析でpH 7.37, Pa_CO2 55.3mmHg, Pa_O2 79.9mmHg, BE 5.5mEq/リットルと拘束性換気障害を伴う慢性呼吸不全が認められた. 血液生科学検査および心電図では異常を認めなかった. 全身麻酔導入前にT_11 -T_12 より硬膜外カテーテルを挿入し, test doseとしてブピバカイン2.5mlを注入したが異常は認められなかった. チオペンチール, サクシニルコリンにて導入し, 笑気・酸素・エンフルレンにて維持し, 筋弛緩薬としてパンクロニウムを用いた. 手術終了20分前に硬膜外カテーテルより0.25%ブピバカイン8mlを注入し, その後エンフルレンを中止した. 注入後心拍数が低下したが, 硫酸アトロピン0.25mgの投与で回復した. その後筋弛緩薬のリバースとしてネオスチグミン2.5mgを硫酸アトロピン1.0mgとともに静脈内投与した. 投与2分後再び徐脈となり, 硫酸アトロピン2.5mgを静脈内投与したが, さらに徐脈となったため硫酸アトロピン0.5mgを追加投与したが心停止となった. 心停止に対し, 胸壁叩打に引続き閉胸式心マッサージを開始したところ, 心電図では正常心電図波形を認めたが, 大腿動脈は触知不能であった. 3分後にエピネフリン0.1mgを静脈内投与したところ, 血圧は回復し患者の意識レベルは清明となり, 全身状態が完全したので気管チューブを抜管した. 以後, 神経学的に問題なく退院した. この症例の心停止は, 硬膜外麻酔により高位交感神経がブロックされ循環動態に変化が生じたかあるいは投与したブピバカインの心毒性に, リバース時に投与した薬剤の影響が加わったため発生したと考えられるので若干の動物実験の結果を加えて発表する.
ISSN:0288-4348