副甲状腺摘出術の既往のある患者の麻酔管理上の問題点

慢性腎不全患者に対する長期血液透析の結果, 腎性骨障害や2次性副甲状腺機能亢進症が増加している. これに対して外科的には副甲状腺亜全摘術や骨障害に対する観血的治療法も施行され, 腎不全とCa代謝異常を考慮に入れた麻酔管理が要求される. われわれは副甲状腺亜全摘術後8日目に大腿骨頸部骨折に対する観血的整復術の麻酔を行い術中から術後にかけて低Ca^++ 血症が原因と考えられる遷延性の低血圧を経験した. 本症例の麻酔管理について文献的考察を加え, 報告する. 40歳, 男性. 透析歴7年. 昭和62年頃より四肢痛出現. 昭和63年4月初旬, C-PTH58.6ng/ml, AI-P62.2U, Ca...

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Hauptverfasser: 小原進, 石井智子, 金内正樹, 溝渕知司, 真嶋良昭, 大源勝則, 片山浩, 井戸幸男
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:慢性腎不全患者に対する長期血液透析の結果, 腎性骨障害や2次性副甲状腺機能亢進症が増加している. これに対して外科的には副甲状腺亜全摘術や骨障害に対する観血的治療法も施行され, 腎不全とCa代謝異常を考慮に入れた麻酔管理が要求される. われわれは副甲状腺亜全摘術後8日目に大腿骨頸部骨折に対する観血的整復術の麻酔を行い術中から術後にかけて低Ca^++ 血症が原因と考えられる遷延性の低血圧を経験した. 本症例の麻酔管理について文献的考察を加え, 報告する. 40歳, 男性. 透析歴7年. 昭和62年頃より四肢痛出現. 昭和63年4月初旬, C-PTH58.6ng/ml, AI-P62.2U, Ca5.29mEq/リットル, P9.8mg/dlにて2次性副甲状腺機能亢進症の診断を受け, 同月6日副甲状腺を摘出した. その後順調に経過したが, 左大腿骨頸部骨折が発見され同月14日観血的整復術が施行された. 術前よりCa3.0mEq/リットル, P9.2mg/dl, C-PTH2.8ng/mlと低Ca, 高P血症を示していた. 麻酔は硬膜外麻酔を併用したGO-NLA麻酔で導入, 維持した. 血圧低下に対してはエフェドリン, ドパミンで対処した. 術中に2%塩化カルシウム40mlを投与した. 出血量約1600ml, 麻酔時間7時間30分であった. 術後ICU入室時CVP-4cmH_2 Oと低値を示し収縮期血圧80mmHgであったため輸液を負荷し, CVPはほぼ0cm H_2 Oまで回復したが, 同程度の低血圧が持続し血中Ca濃度は2.1mEq/リットルまで低下していた. 8.5%グルコン酸カルシウムを緩徐に投与すると直後に収縮期血圧が120mmHgまで上昇し, 約1分後に低下するという経過を繰り返した. 低血圧が遷延したため腎不全に対しては一時期, 腹膜透析を併用した. Ca濃度が正常に近づくにつれて循環動態も安定化し現在, 血液透析療法を継続している. 循環動態の維持における血中Ca濃度の重要性を再認識した症例であった.
ISSN:0288-4348