重症患者の航空機搬送における問題点
人工呼吸中の重症患者を, 栃木県から沖縄県まで搬送することを経験した. 今後の重症患者の航空搬送の参考に, 本症例の経過と国内での搬送体制について紹介し, その問題点を検討した. 60歳, 男性. 昭和62年2月, 肺癌で開胸するも手術不能. 4月, リンパ球免疫療法目的にて上京. 9月9日, 脳転移併発にて本院脳外科入院. 9月28日, 減圧開頭術施行. 10月15日, 肺梗塞併発しICUで人工呼吸施行. 10月30日, 心タンボナーデ併発にて強力な循環補助必要となる. 心嚢ドレナージ施行. 10月31日, 本人および家族の強い希望により沖縄への帰郷決意. 2日後搬送. 搬送時現症:意識清明...
Gespeichert in:
Hauptverfasser: | , , |
---|---|
Format: | Tagungsbericht |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 人工呼吸中の重症患者を, 栃木県から沖縄県まで搬送することを経験した. 今後の重症患者の航空搬送の参考に, 本症例の経過と国内での搬送体制について紹介し, その問題点を検討した. 60歳, 男性. 昭和62年2月, 肺癌で開胸するも手術不能. 4月, リンパ球免疫療法目的にて上京. 9月9日, 脳転移併発にて本院脳外科入院. 9月28日, 減圧開頭術施行. 10月15日, 肺梗塞併発しICUで人工呼吸施行. 10月30日, 心タンボナーデ併発にて強力な循環補助必要となる. 心嚢ドレナージ施行. 10月31日, 本人および家族の強い希望により沖縄への帰郷決意. 2日後搬送. 搬送時現症:意識清明. 右肺は肺癌と肺炎, 左肺は肺梗塞にて人工呼吸施行中. 胸腔および心嚢ドレナージ施行中. DOA, DOB共に20μg/kg/minの循環補助. 搬送:搬送は医師2名と看護婦1名が随行. 羽田までは自治医大所有の救急車を使用した. 救急車内は電源, 吸引, 酸素での問題はなく, ICUとほぼ同程度の治療を維持できた. 航空機内へは, 電池駆動の心電計, シリンジポンプ, パルスオキシメータのみを搬入した. 人工呼吸は騒音の問題もあり用手にて行った. 搬送中は患者への刺激を少なくするため塩モヒにて意識レベルを低下させたが, 沖縄到着時は清明となるようにした. 最小限の機器にて重症患者を無事沖縄まで航空機搬送することができた. 人命尊重のため航空機会社は病人の航空機搬送を可能としているが, 通常重症患者は対象とされていない. また, 一般乗客と同乗するため種々の規制がある. 人工呼吸器などによる騒音, 蘇生などの行為, 酸素の量も制限されている. また電源が使用できず, 人工呼吸器, 吸引器, モニター, 微量点滴セットを使用する上で問題となる. 座席確保による経費加算も問題である. 日本国内でも航空機, ヘリコプターによる重症患者搬送体制の確立とその円滑な運営が切望されるところである. |
---|---|
ISSN: | 0288-4348 |