股関節全置換術中, 心停止を来した脂肪塞栓症の1症例
74歳の女性. 右大腿骨頭無腐性壊死の診断にて, 右股関節全置換術が予定された. 術前検査では, とくに異常所見は認めなかった. 麻酔はサイオペンタール, サクシニルコリンにて導入, 気管内挿管後, 酸素-笑気-エンフルレンにて維持した. 手術開始後, 循環動態は安定していたが, 人工骨頭打ち込み操作直後, 血圧は110/60mmHgから50/30mmHgへと急激に低下し, 心拍数は83/分から30/分へと徐脈化したため心停止と判断し, ただちにエンフルレンおよび笑気の投与を中止すると同時に純酸素による人工呼吸と心マッサージを開始した. カルニゲン1Aおよびエフェドリン40mg静注後, 脈拍は...
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Veröffentlicht in: | 蘇生 1988, Vol.6, p.112-112 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 74歳の女性. 右大腿骨頭無腐性壊死の診断にて, 右股関節全置換術が予定された. 術前検査では, とくに異常所見は認めなかった. 麻酔はサイオペンタール, サクシニルコリンにて導入, 気管内挿管後, 酸素-笑気-エンフルレンにて維持した. 手術開始後, 循環動態は安定していたが, 人工骨頭打ち込み操作直後, 血圧は110/60mmHgから50/30mmHgへと急激に低下し, 心拍数は83/分から30/分へと徐脈化したため心停止と判断し, ただちにエンフルレンおよび笑気の投与を中止すると同時に純酸素による人工呼吸と心マッサージを開始した. カルニゲン1Aおよびエフェドリン40mg静注後, 脈拍は触知可能となり, 蘇生開始後約10分にて, 血圧90/50mmHg, 心拍数100/分まで回復した. しかしその後低酸素血症が進行したため, 当院ICUに搬送した. ICU入室時, ドパミン5γ/kg/min投与下で血圧90/60mmHg, 心拍数130/分であり, 肺動脈圧は43/25mmHgと上昇し, 心拍出量は1.3リットル/分と低値を示した. 肺動脈楔入圧および中心静脈圧はそれぞれ10mmHgおよび6mmHgであった. 胸部X線では著明な間質性肺水腫像を呈した. 循環管理に苦慮したが, 低イオン化カルシウム(0.828mM)の補正に伴い血行動態は安定した. またステロイド大量投与, ヘパリンおよびFOYなどの投与が奏効し, 肺水腫および合併したDICが軽快したため第7病日に抜管し, 第8病日に神経症状を残すことなくICUを退室した. 本症例では, 点状出血や尿中脂肪滴あるいは網膜変化などは認められなかったが, 高度の右心不全, 低イオン化カルシウムおよび間質性肺水腫像などの所見から, 人工骨頭の骨髄内打ち込み操作に伴って発症した肺脂肪塞栓症と考えられる. 本症は股関節全置換術中に重篤な病態を呈しうる合併症であるが確実な予防法がないため, 骨セメントモノマーによる影響や空気塞栓などとの鑑別診断をすると同時に発症後早期に治療を開始する必要がある. |
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ISSN: | 0288-4348 |