内臓虚血再環流後の肝臓損傷

ショックその他の原因により, 著しい虚血に陥った後に肝細胞が強い損傷を受けることは良く知られている. 細胞損傷の機序としては低酸素に依るエネルギー産生の低下や細胞内アシドーシスに依るライソソームの破綻などが考えられてきたが, 最近では酸素遊離基が重要な役割を果たすことが明らかになりつつある. そこで本研究では動物を対象として内臓血管を一定時間遮断することに依り肝臓虚血とそれに続く再環流モデルを作り, 過酸化脂質の変化と代表的スキャベンジャーであるスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)とジエチルチオウレア(DMTU)の効果を検討した. ウィスター系ラットを抱水クロラールで麻酔し尾静脈を確保し...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:蘇生 1987, Vol.5, p.95-95
Hauptverfasser: 小川龍, 国元文生, 合志祐一, 長谷川祥子, 荒井賢一, 上原清
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:ショックその他の原因により, 著しい虚血に陥った後に肝細胞が強い損傷を受けることは良く知られている. 細胞損傷の機序としては低酸素に依るエネルギー産生の低下や細胞内アシドーシスに依るライソソームの破綻などが考えられてきたが, 最近では酸素遊離基が重要な役割を果たすことが明らかになりつつある. そこで本研究では動物を対象として内臓血管を一定時間遮断することに依り肝臓虚血とそれに続く再環流モデルを作り, 過酸化脂質の変化と代表的スキャベンジャーであるスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)とジエチルチオウレア(DMTU)の効果を検討した. ウィスター系ラットを抱水クロラールで麻酔し尾静脈を確保した. ヘパリン投与後開腹して, 前腸間膜動脈と腹腔動脈を遮断した. 一定時間後に解除してから閉腹した. 輸液の影響を観るため乳酸リンゲル液を解除後6時間に20ml/100g投与した. 非輸液群より, 経時的に肝臓を摘出して, 過酸化脂質の定量と形態学的観察に供した. また非輸液群に種々の量のSOD, DMTUを前投与した時の生存率と肝臓過酸化脂質および形態への影響を調べた. 虚血時間と生存率との関係は10分では生存率100%, 20分100%, 30分15%, 40分以上0%であった. 輸液を行うと生存率が30分虚血群100%, 60分30%に上昇した. これは初期死亡は, 循環血液量の喪失に依ることを示した. 30分虚血後輸液群でも肝臓の過酸化脂質は確実に上昇し, 電顕的にも変化が観察された. 30分虚血非輸液群にSODを大量(0.5mg/100g以上)前処置すれば生存率が有意に改善された. また肝臓過酸化脂質の増加を抑え, 形態学的変化も軽微に抑えた. DMTUの効果は少なかった. 内臓虚血は酸素遊離基の産生を増し, 腸管の血管からの体液喪失をもたらすことが知られた. また肝臓も著しく損傷を受けることが明らかとなった.
ISSN:0288-4348