大動脈クランプ法による犬全脳虚血実験モデルの検討

犬の脳血流は頸動脈や椎骨動脈以外にも豊富な側副血行路に依存しており, 全脳虚血実験モデルを作成する場合は全身血流を停止させる方法が確実である. その方法の一つとして大動脈クランプ法があるが, 従来より大静脈の閉塞を併用する報告が多いが, われわれは大動脈のみのクランプより全脳虚血実験を施行したので報告する. 予備実験 雑種成犬を用い, 大動脈のみ, 大動脈と下大静脈, 大動脈と上下大静脈のクランプを行い心機能変化を観察した. この結果, 大動脈のみのクランプにより一過性に左室内圧は上昇するがしだいに低下, dp/dtは減少したが60分経過後でも心拍動は持続した. 大動脈と下大静脈のクランプ例も...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Hauptverfasser: 松前孝幸, 飯島一彦, 宇津木誠, 米澤利英
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:犬の脳血流は頸動脈や椎骨動脈以外にも豊富な側副血行路に依存しており, 全脳虚血実験モデルを作成する場合は全身血流を停止させる方法が確実である. その方法の一つとして大動脈クランプ法があるが, 従来より大静脈の閉塞を併用する報告が多いが, われわれは大動脈のみのクランプより全脳虚血実験を施行したので報告する. 予備実験 雑種成犬を用い, 大動脈のみ, 大動脈と下大静脈, 大動脈と上下大静脈のクランプを行い心機能変化を観察した. この結果, 大動脈のみのクランプにより一過性に左室内圧は上昇するがしだいに低下, dp/dtは減少したが60分経過後でも心拍動は持続した. 大動脈と下大静脈のクランプ例もほぼ同様の経過を示した. 大動脈と上下大静脈のクランプ例は心機能の低下が著しかった. 全脳虚血実験 方法:体重8ないし15kgの雑種成犬を笑気またはペントバルビタールで麻酔しPEEP 5cm H_2 O下に人工呼吸した. 左開胸し大動脈起始部を10分間クランプし血流再開後180分にわたり体循環, 脳循環, 血液ガス分析値について観察した. 結果 46頭中29頭が実験を終了でき失敗例の20%はdeclamping shockによるものであった. 大動脈クランプにより中心静脈圧は上昇したが, 矢状静脈洞圧, 脳圧は上昇しなかった. 虚血解除後は動脈圧の低下, Pa_O2 の低下, Pa_CO2 の上昇が見られた. 結論 大動脈のクランプのみで心機能は維持できる. 中心静脈圧の上昇による脳への影響は少ない. 2) 本法は心肺循環の負荷と開胸操作による侵襲は大きいが, 簡便で有用な全脳虚血実験モデルと考えられる.
ISSN:0288-4348