1.顎骨単純性骨嚢胞のX線学的分類

【背景】顎骨の単純性骨嚢胞(Simple bone cyst:SBC)は, 10歳代の若年者に好発し, 術後経過が良好で再発が少ないと言われている. X線学的には, 病変に接した歯槽硬線の残存が特徴的であり鑑別診断に有効である. 一方, 30歳以上での発症や術後の再発, 他の顎骨嚢胞や腫瘍性病変と類似のX線像を呈する症例の存在も指摘されており, 臨床所見の相異から, 病因が異なる可能性も示唆されている. しかしながら, 顎骨SBCを分類し, 病態を比較する試みはほとんど行われていない. 【目的】顎骨SBCのX線学的分類の可能性とその意義を検討すること. 【対象と方法】顎骨SBC82例を, 口内...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:歯科放射線 2006, Vol.46 (2), p.83-84
Hauptverfasser: 末井良和, 長崎信一, 中元 崇, 李 薫, 田口 明, バニック サミール, 藤田 實, 谷本啓二
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:【背景】顎骨の単純性骨嚢胞(Simple bone cyst:SBC)は, 10歳代の若年者に好発し, 術後経過が良好で再発が少ないと言われている. X線学的には, 病変に接した歯槽硬線の残存が特徴的であり鑑別診断に有効である. 一方, 30歳以上での発症や術後の再発, 他の顎骨嚢胞や腫瘍性病変と類似のX線像を呈する症例の存在も指摘されており, 臨床所見の相異から, 病因が異なる可能性も示唆されている. しかしながら, 顎骨SBCを分類し, 病態を比較する試みはほとんど行われていない. 【目的】顎骨SBCのX線学的分類の可能性とその意義を検討すること. 【対象と方法】顎骨SBC82例を, 口内法およびパノラマX線写真の所見を元に, 典型例, 非典型例, その他の症例の3群に分類し, 性別, 年齢, X線所見, 予後(治癒と再発)を比較した. 各群の症例が有するX線所見は以下の通りである. 典型例:歯槽硬線の残存, 円滑な辺縁, 骨膨隆が無いか円滑で周囲骨と移行的非典型例:歯槽硬線の消失, 歯根吸収, ホタテ貝状辺縁(内部隔壁様構造を含む), 結節状の骨膨隆(突出した, あるいは表面が不規則な膨隆), 内部不透過物の存在, 多発病変その他の症例:骨梁と判別困難あるいは二重様を呈する辺縁なお, 顎骨SBC報告例の調査結果も性別, 年齢, 予後の評価に用いた. 【結果】典型例(46症例)は女性にやや多く25例, ほとんどが10歳代で平均年齢は16.8歳. 非典型例(29症例)は女性に多く21例. 30歳代に最も多く平均年齢は38.8歳. その他の症例は, 男性3例, 女性4例で平均年齢は21.6歳であった. 術後の再発はすべて非典型例に認められ, 経過観察のなされた12例中9例, 75%の再発率であった. 再発病変の多くは術後に骨形成を示したが骨梁構造は確認されず, 後に透過像の再発あるいは拡大を示した. その他の症例では, 術後に硬化縁が残存し, 内部に骨梁形成が確認されることも無かった. 報告例はX線学的に分類できなかったが, 男女比は1:1, 平均年齢約22歳, 再発率は約27%であった. 【まとめと考察】顎骨SBC症例をX線学的に3群に分類すると, 性別, 年齢, 予後に違いが認められた. 特に予後と関連性を有する事は, 臨床的に意義深いと考えられた. 非典型例において, 術後の経過観察は必須であり, 骨形成の有無や量ではなく骨梁形成を確認することの重要性が示唆された.
ISSN:0389-9705