14.胃腺癌の顎骨転移症例のCT, MRI画像

口腔領域への他臓器からの遠隔性転移性腫瘍はまれであり, その頻度は1%以下と極めて低い. 口腔への転移性腫瘍の原発部位は, 肺が最も多く, 胃からの頻度は5-10%程度である. 口腔での転移の部位は臼歯部が最も多いと報告されている. 今回, 私たちは, 胃癌から顎骨の前歯部への転移症例を経験したので報告した. 患者は74歳, 女性. 下顎前歯部歯肉の腫脹を主訴に来院した. 現病歴は, 平成15年某病院にて, 肝転移を伴う胃癌と診断され, 3月に外科処置を受けた. 肝転移に対しては化学療法が行われた. 平成15年12月に下顎左側前歯部に腫脹を認めたため, 近医を受診したが, その数カ月前から,...

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Veröffentlicht in:歯科放射線 2004, Vol.44 (4), p.278-279
Hauptverfasser: 内山百夏, 柿本直也, 中谷温紀, 加藤和子, 玉木順子, 蒲生祥子, 村上秀明, 古川惣平, 岸野万伸
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:口腔領域への他臓器からの遠隔性転移性腫瘍はまれであり, その頻度は1%以下と極めて低い. 口腔への転移性腫瘍の原発部位は, 肺が最も多く, 胃からの頻度は5-10%程度である. 口腔での転移の部位は臼歯部が最も多いと報告されている. 今回, 私たちは, 胃癌から顎骨の前歯部への転移症例を経験したので報告した. 患者は74歳, 女性. 下顎前歯部歯肉の腫脹を主訴に来院した. 現病歴は, 平成15年某病院にて, 肝転移を伴う胃癌と診断され, 3月に外科処置を受けた. 肝転移に対しては化学療法が行われた. 平成15年12月に下顎左側前歯部に腫脹を認めたため, 近医を受診したが, その数カ月前から, 腫脹を自覚していたが, 疼痛がなかったために放置していた. 近医では, 切開および投薬の処置を受けたが, 症状は改善しなかったために, 大阪大学歯学部附属病院口腔外科を紹介され, 平成16年1月に本院を受診した. 当院での初診時の現症は, 下顎左側犬歯部の唇側に21×18×20mm大の弾性硬の腫瘤を認めた. 腫瘤の表面は肉芽様で, 一部上皮で被覆していた. また, 左側オトガイ部に知覚麻痺が認められた. 初診時の単純撮影では, 下顎左側犬歯部の根尖部を中心として骨吸収像を認めた. CT検査では, 下顎左側犬歯部唇側に30mm大の境界不明瞭な病変を認め, 不均一な造影性を示し, 下顎左側犬歯部根尖部相当部に, 15mm×7mm大の骨吸収像を認めた. MR検査では, 下顎左側犬歯部の唇側に30mm大の境界不明瞭な像を認め, 同部の信号はT1強調画像にて低信号, T2強調画像にて中程度な信号強度を示した. 造影後に病変の周囲に造影性を示した. 生検時の病理組織標本では, 不規則な形態を示す腺腔のび漫性増殖からなり, 胃癌の切除材料で見られた中分化型管状腺癌の組織像と同様の像を示した. また, 血管侵襲も顕著であった. これらによって, 口腔への腫瘍は胃癌からの顎骨転移と診断した. 胃癌の手術を受けた病院にて, 化学療法が施行されたが効果はなく, 疼痛も増強してきたため, 本年4月末に再度本院を受診した. 再来院時のCT検査では, 腫瘤は40mm×35mm大で, 当院の初診時のものと比べて増大し, さらに内部には骨組織の形成を認めた. 当科にて外部放射線治療を行ったが, 放射線治療後のCT検査では, 腫瘤の大きさは50mm×45mm大で放射線治療開始時と比べて増大し, さらに放射線治療開始時に認められた骨形成像がより広範囲に認められた.
ISSN:0389-9705