27.単純性骨嚢胞における皮質骨の膨隆と弧線状吸収の意味

【目的】単純性骨嚢胞のエックス線所見は境界明瞭な透過像, 歯根中隔への拡大によるscalloped border, 周囲骨のpreliminary pencil sketchラインなどが特徴として述べられており, これまで皮質骨における膨隆や吸収等の変化は比較的少ないとされてきた. しかし, 最近では従来の報告と異なり, 本嚢胞における皮質骨の変化は多くみられ, 我々も同様の印象を持っている. このような皮質骨の変化はaggressiveな病態過程であるにも関わらず, 内部は殆ど空洞性で矛盾する感じを受ける. そこで, 今回は皮質骨の変化について注目し, とくに膨隆と弧線状吸収の意味を検討し,...

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Veröffentlicht in:歯科放射線 2004, Vol.44 (4), p.259-260
Hauptverfasser: 川畑義裕, 川床正剛, 犬童寛子, 河野一典, 岩下洋一朗, 末永重明, 佐藤強志, 馬嶋秀行, 仙波伊知郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:【目的】単純性骨嚢胞のエックス線所見は境界明瞭な透過像, 歯根中隔への拡大によるscalloped border, 周囲骨のpreliminary pencil sketchラインなどが特徴として述べられており, これまで皮質骨における膨隆や吸収等の変化は比較的少ないとされてきた. しかし, 最近では従来の報告と異なり, 本嚢胞における皮質骨の変化は多くみられ, 我々も同様の印象を持っている. このような皮質骨の変化はaggressiveな病態過程であるにも関わらず, 内部は殆ど空洞性で矛盾する感じを受ける. そこで, 今回は皮質骨の変化について注目し, とくに膨隆と弧線状吸収の意味を検討し, また単純性骨嚢胞の成因の仮説として病巣内部の軟組織とくに肉芽組織の関与を推測した. 【対象と方法】対象は病理組織学的, エックス線的および手術所見から単純性骨嚢胞と考えられた19例である. 評価はエックス線所見(口内法, パノラマ, CTなど)に病理組織所見と手術所見を加えて行った. 【結果】年齢は30歳以下が79%で, とくに10歳代が53%で若年に多くみられた. 手術所見が明らかであった14症例において, 処置時の病巣骨壁への軟組織付着は93%で観察された. 大部分は少量の線維性肉芽組織であったが, 4例(29%)で比較的多量の肉芽様組織の存在が明瞭に観察され, その内, 小さな病巣は3例で, 大きな病巣は1例であった. 病巣の大きさと軟組織量の間には統計学的に有為な相関がみられた. また, 骨新生に関しては小さな病巣で全例みられた. これらの結果から単純性骨嚢胞の早期の小さな病巣では修復性線維性肉芽組織の存在が示唆された. エックス線所見において, 比較的大きな進行した病巣で皮質骨の変化は顕著で, 全体として膨隆は63%, 弧線状吸収は74%, 菲薄化は89%で, 従来の報告と異なり, 変更する必要がある. 組織所見では, これらの病巣の軟組織内には鋸歯状辺縁を持つ層板状小骨片が一部みられ, 吸収性の骨変化を示していた. 【まとめ】単純性骨嚢胞における皮質骨の膨隆は, 嚢胞, 腫瘍にみられるような強い物理的な圧力の存在を, また弧線状吸収は肉芽腫性病変の辺縁に類似している印象を受けた. 単純性骨嚢胞の成因として, 何らかの原因にて骨髄内出血などの変化に続いて骨新生を伴う修復性線維肉芽組織が形成され, 一部の病変では軟組織成分が腫瘍的あるいはaggressiveな性格を獲得. それにより, 病巣は拡大し, 膨隆や弧線状吸収が進行. 一方, 内部軟細織は充分な器質化が阻害され, 融解, 消失を受け, 最終的にエックス線像で我々が観察する空洞性病巣が形成されると推測された. 小さな早期病変で線維性肉芽組織が顕著であった点, aggressiveな骨変化と肉芽組織との関連が示唆された点は単純性骨嚢胞の成因解明に1つのヒントを与えるものと考えられた.
ISSN:0389-9705