9.開口障害を生じた耳下腺悪性腫瘍の一例
開口障害を主訴に来院する患者の中に顎関節疾患が原因でない症例もあり, 一般歯科診療において診断に苦慮することもある. 症例によっては病態が進行してから精査依頼で来院する場合もある. 今回, 顎関節疾患の疑いで当科に紹介来院し耳下腺悪性腫瘍であった症例を経験したので報告する. 症例は51歳の男性, 顎が突っ張り物が食べられないとの主訴で来院した. 半年前から右側耳介下部に腫瘤を自覚し近内科医を受診し異常なしと言われ放置. 2か月前に開口障害が出現, 1か月前に右側耳下腺部の腫脹, 開口障害が顕著となり某歯科医を受診. 顎関節症の疑いで紹介来院した. 初診時右側下顎枝付近に直径5cm程度の腫脹があ...
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Veröffentlicht in: | 歯科放射線 2003, Vol.43 (4), p.233-234 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 開口障害を主訴に来院する患者の中に顎関節疾患が原因でない症例もあり, 一般歯科診療において診断に苦慮することもある. 症例によっては病態が進行してから精査依頼で来院する場合もある. 今回, 顎関節疾患の疑いで当科に紹介来院し耳下腺悪性腫瘍であった症例を経験したので報告する. 症例は51歳の男性, 顎が突っ張り物が食べられないとの主訴で来院した. 半年前から右側耳介下部に腫瘤を自覚し近内科医を受診し異常なしと言われ放置. 2か月前に開口障害が出現, 1か月前に右側耳下腺部の腫脹, 開口障害が顕著となり某歯科医を受診. 顎関節症の疑いで紹介来院した. 初診時右側下顎枝付近に直径5cm程度の腫脹があり, 同部に圧痛と発赤, 口唇の神経麻痺も認められた. 最大開口距離は27mm, 関節音, 歯や粘膜等に異常所見はなかった. 上記の所見から臨床診断は右側下顎枝付近の炎症か耳下腺腫瘍とした. パノラマX線写真検査, 後頭前頭方向投影, 右側耳下腺部の接線方向投影を行ったが骨に異常所見はなかった. 同日右側耳下腺部の超音波検査を行い, 境界不明瞭で内部不均一な低エコーの病変が認められた. MR画像検査では右側耳下腺内に境界不明瞭, 内部不均一な部分を認め, 病変は咬筋と傍咽頭隙に及んでいた. 以上の所見から耳下腺の悪性腫瘍と診断した. 核医学検査(シンチグラフィー)で異常所見はなかった. 初診から1か月後に耳下腺摘出, 頚部郭清が行われ, 病理組織検査から悪性筋上皮腫と診断された. 術後他施設での放射線治療を行った. 摘出標本から胃ガンからの転移癌の可能性を指摘され, 転院したがその後詳細は不明. 参考症例として開口障害を生じた耳下腺多形性腺腫を経験したので報告した. 43歳の女性, 右の顎が痛むとの主訴で来院. 1年前からスプリント治療を開始し症状は軽減していた. 初診時右側咬筋, 胸鎖乳突筋の自発痛, 運動時痛, 右側顎関節部の腫脹がみられ, 最大開口距離は28mm, 有痛46mmであった. 臨床診断は顎関節症のI型とし, 顎関節部のMR画像検査を行った. 両側顎関節に明らかな異常所見はなく, 右側下顎枝の後方に境界明瞭, 内部均一でT1強調像で低信号, T2強調像で高信号を呈する病変がみられた. 追加のMR画像検査から右側耳下腺内に境界明瞭, 内部均一な病変が認められ, 画像診断は多形性腺腫とした. 摘出手術後の病理検査で多形性腺腫と確定された. 上記2例を比較すると, 顎関節部周囲の腫脹や, 疼痛は類似していた. しかし, 開口障害の程度, 特に良性腫瘍では下顎頭の運動範囲は悪性腫瘍に比べ大きかった. さらに神経症状は悪性腫瘍のみにみられた. 画像所見では病変の境界, 辺縁, 内部の性状に明らかな相違が認められた. |
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ISSN: | 0389-9705 |