智歯の予後に関する診断学的研究

目的:智歯は最後方臼歯であるために, 萌出スペース不足から位置異常や埋伏となることが多く, 智歯周囲炎や齲蝕を引き起こすことから, 予防的に抜歯されることが多い. しかしながら, 無症状で経過する場合も少なくなく, 抜歯の必要性については様々の見解があるのが現状である. そこで今回我々は智歯抜歯の診断基準を確立するための基礎的データを得ることを目的に, X線写真をもとに検討を行った. 調査対象および方法:昭和48年から平成元年までの本学歯学部卒業生790名で, 臨床実習において撮影されたfull-mouth口内法X線写真をもとに, 撮影当時, 左右上下いずれかの智歯を有した638名を対象にアン...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:歯科放射線 1999, Vol.39 (suppl), p.81-81
Hauptverfasser: 栗原直之, 佐藤しづ子, 飯久保正弘, 庄司憲明, 笹野高嗣
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:智歯は最後方臼歯であるために, 萌出スペース不足から位置異常や埋伏となることが多く, 智歯周囲炎や齲蝕を引き起こすことから, 予防的に抜歯されることが多い. しかしながら, 無症状で経過する場合も少なくなく, 抜歯の必要性については様々の見解があるのが現状である. そこで今回我々は智歯抜歯の診断基準を確立するための基礎的データを得ることを目的に, X線写真をもとに検討を行った. 調査対象および方法:昭和48年から平成元年までの本学歯学部卒業生790名で, 臨床実習において撮影されたfull-mouth口内法X線写真をもとに, 撮影当時, 左右上下いずれかの智歯を有した638名を対象にアンケート調査を行った. 回収された308名(回収率48.3%)の智歯(上顎397本, 下顎426本)に対し, (1)症状の有無および抜歯の既往, (2)症状の発現時期, (3)抜歯の時期に関して臨床統計を行った. さらに, X線写真をもとに, 萌出方向および萌出程度, 智歯と第二大臼歯とのスペースについて智歯の状態を分類し, (1)~(3)との関連性について検討した. 結果:統計学的に, 左右差はみられなかったため, 左右一括して統計処理した. (1)上顎では, 25%の歯に症状の発現がみられ, 智歯周囲炎が43%, 齲蝕が42%であり, 54%が抜歯されていた. また, 下顎では, 32%の歯に症状の発現がみられ, 智歯周囲炎が80%, 齲蝕が14%であり, 44%が抜歯されていた. (2)上顎では30歳代までに93%の歯に症状がみられ, 下顎では30歳代までに90%の歯に症状がみられた. (3)上顎では, 30歳代までに96%が抜歯され, 下顎では, 30歳代までに95%が抜歯されていた. また, X線所見による智歯の状態と症状との間には有意差はみられなかった. 結論:上顎と下顎を比較すると, 抜歯された智歯は上顎に多く, 症状の発現は下顎に多かった. また, 智歯周囲炎は下顎に多く, 齲蝕は上顎に多くみられた. いずれの症状もほとんど30歳代までに発現していた.
ISSN:0389-9705