真菌性上顎洞炎を疑った上顎洞内骨芽細胞腫の一例
良性骨芽細胞腫は骨芽細胞の増殖と類骨組織形成を呈する良性骨腫瘍性病変で, 一般には脊椎, 四肢骨に発生し, 顎骨に発生するのはまれとされている. 今回我々は, 上顎洞に発生し真菌性上顎洞炎を疑った良性骨芽細胞腫を経験したので若干の考察を加えて報告する. 患者:22歳, 女性 初診:1998年5月15日 主訴:左側上下顎の痛み 現病歴:1997年12月頃より右側上顎部に疼痛出現し, 某歯科医を受診し右側上顎第二大臼歯の抜髄処置を行うも改善せず, 他に2つの歯科医院を受診するも改善ないため本学保存科へ紹介来院. 右側上顎第二大臼歯の根管治療開始するも疼痛改善せず口腔外科へ転科. 既往歴:特記事項な...
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Zusammenfassung: | 良性骨芽細胞腫は骨芽細胞の増殖と類骨組織形成を呈する良性骨腫瘍性病変で, 一般には脊椎, 四肢骨に発生し, 顎骨に発生するのはまれとされている. 今回我々は, 上顎洞に発生し真菌性上顎洞炎を疑った良性骨芽細胞腫を経験したので若干の考察を加えて報告する. 患者:22歳, 女性 初診:1998年5月15日 主訴:左側上下顎の痛み 現病歴:1997年12月頃より右側上顎部に疼痛出現し, 某歯科医を受診し右側上顎第二大臼歯の抜髄処置を行うも改善せず, 他に2つの歯科医院を受診するも改善ないため本学保存科へ紹介来院. 右側上顎第二大臼歯の根管治療開始するも疼痛改善せず口腔外科へ転科. 既往歴:特記事項なし 臨床所見:右側耳前部から下顎角部にかけての疼痛を認める他, 前頬部及び顎関節部に異常所見を認めず. 口腔内所見は右側上顎大臼歯部の口蓋粘膜の腫脹と圧痛, 粘膜は正常色. 同大臼歯の打診痛強を認めた. その他異常所見なし. 臨床診断:右側上顎第二大臼歯起因の歯性上顎洞炎 単純X線所見:パノラマX線写真および口内法X線写真より右側上顎洞内の含気性の低下を認め右側上顎大臼歯部の上顎洞底は消失. 右側上顎第二大臼歯を中心に近遠心側での歯槽硬線の消失を認め, 洞内に石灰化の弱い不透過像を認めた. 他の副鼻腔に異常所見は認めず, 周囲の骨破壊像も認めない. CT所見:右側上顎洞内に内部均一な軟組織陰影を認める. 洞底部にはやや形態不整の骨壁と同程度のdensityを示す不透過物を認め, 第二大臼歯根尖部歯槽骨から連続して存在した. その他の骨破壊所見は認めなかった. また造影CTで軟組織陰影はほとんど造影されなかった. 以上の所見から腫瘍性病変よりは, アスペルギルス等の真菌による真菌性上顎洞炎を疑い, 右側上顎洞根治術が行われた. 手術所見より右側上顎洞内上方には粘液瘤様組織を認めたが, その他の部分は茶褐色の弾性靭の腫瘍塊を認めた. 腫瘍中央部は一部皮膜が欠け内部に石灰化物を多数認めた. 腫瘍は一塊として周囲骨の可及的掻爬を含め摘出が行われた. 後日病理からの報告では骨芽細胞腫(aggressive type)との回答を得て追加切除を行い, 現在経過観察中の症例である. X線所見的に骨芽細胞腫は透過像, 不透過像および両者の混在像など多様な像を呈するが, 発育過程の初期においては骨細胞に乏しく透過像としてみられる. しかし増大するに従い中心部分より類骨組織の石灰化が亢進し徐々に点状像より塊状の不透過像を呈するに至る, また周囲の骨硬化像は欠如するか軽微であることが多く, 臨床的には患部の疼痛と膨隆が見られる. これら良性骨芽細胞腫のような線維-骨性病変はその病期において多様な像を呈するため鑑別診断に苦慮することが多い. 上顎洞内に発生した良性骨芽細胞腫について文献的に検討し考察する. |
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ISSN: | 0389-9705 |