上顎洞に浸潤しmucous cystを併発していたmucoepidermoid carcinomaの1例

顎顔面領域にみられる唾液腺の悪性腫瘍のうち, mucoepidermoid carcinomaの口蓋部での発生頻度は比較的高いといわれている. 今回我々は上顎洞内に浸潤し, かつ洞粘膜から発生したと思われる大きなmucous cystの存在がみられたmucoepidermoid carcinomaの症例を経験したのでその概要について報告する. 症例は, 24歳の女性で, 平成8年7月8日左側口蓋部の膨隆を主訴に本学歯科病院に来院した. 現病歴として, 1年程前に某歯科にて上顎左側第一大臼歯の加療中に, 口蓋部の膨隆を指摘されたが1年間放置していた. その後, 他の部位の治療のため某歯科を受診し...

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Hauptverfasser: 荒木正夫, 島田英治, 本田和也, 岩井一男, 橋本光二, 篠田宏司, 小宮山一雄
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:顎顔面領域にみられる唾液腺の悪性腫瘍のうち, mucoepidermoid carcinomaの口蓋部での発生頻度は比較的高いといわれている. 今回我々は上顎洞内に浸潤し, かつ洞粘膜から発生したと思われる大きなmucous cystの存在がみられたmucoepidermoid carcinomaの症例を経験したのでその概要について報告する. 症例は, 24歳の女性で, 平成8年7月8日左側口蓋部の膨隆を主訴に本学歯科病院に来院した. 現病歴として, 1年程前に某歯科にて上顎左側第一大臼歯の加療中に, 口蓋部の膨隆を指摘されたが1年間放置していた. その後, 他の部位の治療のため某歯科を受診した際に, 同部位の異常を指摘され紹介来院した. 上顎左側智歯は6月3日に抜去されていた. 既往歴・家族歴には特記する事項はなかった. 口内所見としては, 左側口蓋部から臼歯部の舌側歯肉部にかけて弾性硬の膨隆を認め, 大きさは30×30mm大で中心部は陥凹し発赤を認めた. 圧痛はなく, 境界も比較的明瞭であった. 回転パノラマX線像では左側上顎洞内にドーム状に2つのピークを有した不透過像がみられた. 左側第一, 二大臼歯の歯根と重複する部の洞底線は不明瞭となっていた. また, 同部位から上顎結節にわたる歯槽骨部にはびまん性の骨吸収を認めた. CT-imageでは左側臼歯部において上顎洞底部の頬舌側皮質骨の破壊を認め, 洞内にはlow densityなmassが前方と後方に分かれて存在し, 後方のmassは口蓋部のlow densityなmassと連続し, 一部では鼻腔底の骨を上部に圧迫していた. 臨床的に上顎の悪性腫瘍が疑われたため, エンハンスCTとMRI検査を施行した. エンハンスCTでは病変部は不均一にエンハンスされていた. MRIではT1強調像で病変の境界は明瞭で内部はlow intensityを呈し洞内に浸潤し, T2強調像で病変は内部が不均一なlow intensityを呈していた. また, 洞内のmassは前方および後方ともhigh intensityを呈していた. 生検mucoepidermoid carcinomaと診断され, 11月9日に全身麻酔下にて左側上顎骨部分切除および左側頸部郭清術を施行した. 現在, 経過診察中である.
ISSN:0389-9705