口腔底部にみられた腺様嚢胞癌の2例

腺様嚢胞癌は唾液腺の悪性腫瘍の中では粘表皮癌と同様で, その発生頻度は比較的高いが, 唾液腺腫瘍全体でみれば10%以下である. 一般に, 大唾液腺では顎下腺, 小唾液腺では口蓋腺に認められたものが多いが, 口腔のあらゆる腺組織から生じるとされている. 臨床的には疼痛を有することが多いが, 発育は緩慢で, しばしば良性腫瘍と誤診されることがあるので, 早期診断がとくに重要な疾患の一つである. 今回我々は顎下腺および口腔底部の小唾液腺から発生したと考えられる2例を経験したのでその概要を報告する. 患者は42歳の男性で, 平成8年3月12日に右側顎下部の腫脹を主訴に来院した. 現病歴は半年程前より右...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:歯科放射線 1997, Vol.37 (suppl), p.73-73
Hauptverfasser: 桑島永治, 荒木正夫, 島田英治, 橋本光二, 篠田宏司, 田中孝佳, 岩成進吉, 滝川富之, 本田雅彦, 寺門正昭, 小宮山一雄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:腺様嚢胞癌は唾液腺の悪性腫瘍の中では粘表皮癌と同様で, その発生頻度は比較的高いが, 唾液腺腫瘍全体でみれば10%以下である. 一般に, 大唾液腺では顎下腺, 小唾液腺では口蓋腺に認められたものが多いが, 口腔のあらゆる腺組織から生じるとされている. 臨床的には疼痛を有することが多いが, 発育は緩慢で, しばしば良性腫瘍と誤診されることがあるので, 早期診断がとくに重要な疾患の一つである. 今回我々は顎下腺および口腔底部の小唾液腺から発生したと考えられる2例を経験したのでその概要を報告する. 患者は42歳の男性で, 平成8年3月12日に右側顎下部の腫脹を主訴に来院した. 現病歴は半年程前より右側顎下部に腫脹を生じ, 唾仙痛を訴えたため本学歯科病院口腔外科を紹介され来院した. 初診時の口腔内所見で右側顎下部にくるみ大の板状の硬結を触知し, 下顎骨内面と癒着し不動性であったので, 唾液腺の悪性病変が疑われた. CT像では顎下腺は不整な形態を呈し, 広頚筋との癒着と下顎骨内側面との接触がみられ, 境界は不明瞭で粗造となっていた. Siolographyを施行したところ, 右側顎下腺のワルトン氏管の著明な拡張と腺体の無影像を呈し, CT-Siaiographyでは, 腺体内での漏洩像を認めた. これらの画像所見より腺様嚢胞癌などの唾液腺の悪性腫瘍が疑われた. ^^67 Gaによる腫瘍シンチグラフィーでは集積像は認められなかった. その後, 口腔外科において腫瘍摘出と全頚部郭清術を行った. その摘出物の病理診断から腺様嚢胞癌とされた. 術後, 化学療法と放射線照射を行い, 現在経過観察中である. 患者は54歳の男性で, 平成8年12月11日に舌下部の腫脹を主訴に来院した. 現病歴は2ヵ月前から右側口腔底の腫脹に気づき, 某歯科医院を受診したところ精査を勧められ紹介来院した. 初診時, 口腔内では右側舌下小丘部に小鶏卵大の腫脹が認められ, 周囲との境界は比較的明瞭であり, 弾性硬で波動は触知せず圧痛は認められなかった. 臨床所見と併せて, 唾液腺の腫瘍性病変が疑われた. Sialographyを施行したところ, 唾液の流出に特に異常はなく, ワルトン氏管は拡張し, 顎下腺体は造影されているが, 前方部に圧迫のみられる唾影像を呈した. CT像では正中から右側顎下部にかけて境界不明瞭なlow densityなmassを認め, CT-Sialographyにより顎下腺はmassの後方に圧迫されているのが確認された. MRI検査ではT1強調像で辺縁不整な低信号, T2強調像で内部不均一な高信号を呈し, Gdエンハンス像では内部は不均一にエンハンスされていた. これらの画像所見より悪性腫瘍も疑われ, 外科的手術を施行した. 摘出物では被膜の外側に舌下腺と思われるものが癒着していた. 病理学的には腺様嚢胞癌との診断であった. 現在は放射線療法を行い, 経過は良好である.
ISSN:0389-9705