尿路結石を認めなかった2,8-DHA結晶尿の1症例
2,8-ジヒドロキシアデニン結晶(2,8-dihydroxyadenine; 2,8-DHA)は,黄~黄褐色で大小不同の球状結晶であり,アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(adenine phosphoribosyl transferase; APRT)欠損症で生じる異常結晶である。症例は60歳代男性で,2012年に糖尿病と診断され糖尿病性腎症による慢性腎不全のため通院中であった。約2年後2,8-DHA結晶を疑う結晶を初めて検出,以後毎回検出した。化学的性状検査を確認し2,8-DHA疑いとして臨床に報告したが,赤外線分光分析で同定できずCTでも尿路結石は確認できなかったため,最終判定に苦...
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Veröffentlicht in: | 医学検査 2016/05/25, Vol.65(6), pp.695-699 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 2,8-ジヒドロキシアデニン結晶(2,8-dihydroxyadenine; 2,8-DHA)は,黄~黄褐色で大小不同の球状結晶であり,アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(adenine phosphoribosyl transferase; APRT)欠損症で生じる異常結晶である。症例は60歳代男性で,2012年に糖尿病と診断され糖尿病性腎症による慢性腎不全のため通院中であった。約2年後2,8-DHA結晶を疑う結晶を初めて検出,以後毎回検出した。化学的性状検査を確認し2,8-DHA疑いとして臨床に報告したが,赤外線分光分析で同定できずCTでも尿路結石は確認できなかったため,最終判定に苦慮した。その後遺伝子解析により,日本人変異遺伝子APRT*J型のホモ接合体APRT*J/APRT*J型であることが判明した。また,2,8-DHA初検出時期とeGFR悪化の時期が一致しており,2,8-DHA結晶自体が腎機能低下の一因である可能性が示唆された。2,8-DHAは結石でなくとも結晶自体が腎毒性に働くことがラットを用いた実験で証明されており,主治医とのディスカッションの中で高尿酸血症治療薬(2,8-DHAの生合成抑制作用も併せ持つ薬剤)の投薬が開始されることになった。本症例は検査室からの結晶報告を機に診断・治療に結びつき,尿沈渣検査が臨床に大きく貢献できた症例であった。 |
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ISSN: | 0915-8669 2188-5346 |
DOI: | 10.14932/jamt.16-13 |