脳性ナトリウム利尿ペプチドが異常高値を示した一症例
脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は心不全等で高値を示すことが知られているが,強い心不全等が存在しないにも関わらずBNPが異常高値を示し,心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide; ANP)値と乖離した症例に遭遇した。そこで,その原因について検討し,推察される若干の知見が得られたので,報告する。症例は77歳,女性。他院で狭心症・高血圧で経過観察されていた。ANPは81.9 pg/mLであったが,BNPが35,347 pg/mLと異常高値を示したため,紹介受診となった。その後もBNPの異常高値が持続...
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Veröffentlicht in: | 医学検査 2016/05/25, Vol.65(6), pp.674-678 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は心不全等で高値を示すことが知られているが,強い心不全等が存在しないにも関わらずBNPが異常高値を示し,心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide; ANP)値と乖離した症例に遭遇した。そこで,その原因について検討し,推察される若干の知見が得られたので,報告する。症例は77歳,女性。他院で狭心症・高血圧で経過観察されていた。ANPは81.9 pg/mLであったが,BNPが35,347 pg/mLと異常高値を示したため,紹介受診となった。その後もBNPの異常高値が持続したが,臨床症状とは合致せず,心エコーや心電図からも原因は特定できなかった。一方,測定原理や測定法の相違によりBNP値に解離が生じている可能性を検討するため,蛍光酵素免疫測定法及び化学発光酵素免疫測定法で測定したが,同様の値を示した。また,非特異反応の有無を確認するために希釈直線性試験を実施したが,希釈測定による変化率は6%以内であった。また,異好抗体の一つであるHAMAや本法に使用されている標識酵素(アルカリフォスファターゼ;ALP)に対する抗体の影響を確認するために,それらの吸収剤を添加し測定したが,同様の値であった。さらにゲル濾過分析を行ったところ,患者検体にはBNP-32の分子量である3.5 kDaよりも高分子分画に免疫活性物質のピークを認めた。BNPの測定系は生理活性を有するBNP-32だけでなくpro-BNPも測り込んでいることが知られている。本症例では,pro-BNPに自己抗体等の結合,或いはpro-BNPからBNP-32に切断する酵素の欠損によりpro-BNPが異常に蓄積したことでBNP値が異常高値を示したと推察された。 |
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ISSN: | 0915-8669 2188-5346 |
DOI: | 10.14932/jamt.15-90 |