心筋マーカー迅速検出キットの比較検討

急性冠症候群の診断に有用な検査項目として,ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)とトロポニンTがある。今回,H-FABP定性迅速検出キット「ラピチェック® H-FABP:ラピチェック」(DSファーマバイオメディカル)とH-FABP定量迅速検出キット「ラピッドチップ® H-FABP:ラピッドチップ」(積水メディカル)およびトロポニンT定性迅速検出キット「トロップTセンシティブ®:トロップT」(ロシュ・ダイアグノスティックス)の比較検討を行い,それぞれの検査キットの特徴を評価した。3キットともに陽性を示した疾患は急性心筋梗塞,狭心症,心不全,大動脈乖離,たこつぼ型心筋症などであった。H-FAB...

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Veröffentlicht in:医学検査 2016/05/25, Vol.65(3), pp.332-336
Hauptverfasser: 古川, 聡子, 河口, 勝憲, 前田, ひとみ, 加瀬野, 節子, 小野, 公美, 上杉, 里枝, 通山, 薫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:急性冠症候群の診断に有用な検査項目として,ヒト心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)とトロポニンTがある。今回,H-FABP定性迅速検出キット「ラピチェック® H-FABP:ラピチェック」(DSファーマバイオメディカル)とH-FABP定量迅速検出キット「ラピッドチップ® H-FABP:ラピッドチップ」(積水メディカル)およびトロポニンT定性迅速検出キット「トロップTセンシティブ®:トロップT」(ロシュ・ダイアグノスティックス)の比較検討を行い,それぞれの検査キットの特徴を評価した。3キットともに陽性を示した疾患は急性心筋梗塞,狭心症,心不全,大動脈乖離,たこつぼ型心筋症などであった。H-FABPとトロポニンTの判定が異なった症例はすべてH-FABP:陽性,トロポニンT:陰性であった。H-FABPのみが陽性を示した中には,急性心筋梗塞の超急性期の症例,腎機能低下によりH-FABP濃度が上昇している可能性がある症例,骨格筋由来のH-FABPが血中に逸脱した症例などが確認された。さらに,H-FABPのみが陽性の中には心電図や心エコー上で治療介入を要する明らかな所見が確認されなかった症例(意識消失やヘルニア)も含まれていた。また,H-FABPのうちラピチェックのみが陽性であった2例は,めまい,不安障害の症例であり,ラピッドチップの定量値はそれぞれ5.5 ng/mL,5.0 ng/mLと陰性であった。これらの症例における,H-FABP上昇の可能性は低く,ラピチェックの偽陽性であることが示唆された。それぞれの心筋マーカー迅速キットが持つ特徴を理解し,使用することが必要である。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.15-84