走査電子顕微鏡の生薬学的研究への応用(6)単晶

これまでに植物や生薬の組織中に含まれている針状晶および微細結晶の, 光学顕微鏡では観察が難しい微細な形状について走査電子顕微鏡で観察した結果と生薬の識別や基原植物の同定への応用について報告した1-5), 本報では単晶について観察した結果を報告する. 単晶も光学顕微鏡ではその立体構造や細かい形状まで知ることはむずかしいが, 走査電子顕微鏡を用いればそのような観察が可能である. これまでの単晶の形状を観察した報告は光学顕微鏡によるものが多く, 走査電子顕微鏡によるものは少ない6-24), 多種の試料について調べたものはなおさらである. そこで多くの植物や生薬中の単晶を走査電子顕微鏡により観察した結果, その立体構造や微細な形状には種々なものがあることがわかった. また前報の針状晶や微細結晶と同様に単晶の形状およびそれを含む植物の分類との間の関連性と生薬への応用について検討を加えた. 実験方法と実験材料 これまでの報告1-5)と同様の方法および装置を用いて入手できた227科4248種の植物および生薬について調べた. 観察結果 Appendix Iに単晶が観察された実験材料名を, Table Iにその器官と結晶のタイプを記した.