医薬品としての生薬とその薬理学的研究をめぐって
1. はじめに 生薬は一方では, 古代から医薬品として用いられ, 一方では, 科学の黎明とともに多くの学問分野で研究対象となってきた. 本稿では, 天然物-生薬-医薬品という流れに沿って, 表題の内容の下, 生薬に関する分野の一端を垣間見て, 若干のことを解説した. 2. 天然物の利用 天然物のなかで人が経口的にとるものは食品と医薬品である. それを一つの角度からみると, 人類は天然物を食品的なものとして, あるいは医薬品的なものとして利用してきて, 歴史上のある時期にそれぞれの国や自治区単位でそれらを食品とか医薬品とかに区分したこととなる. この前者の段階での利用の仕方は天然物の本質に基づく...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 生薬学雑誌 1987-03, Vol.41 (1), p.1-18 |
---|---|
1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 1. はじめに 生薬は一方では, 古代から医薬品として用いられ, 一方では, 科学の黎明とともに多くの学問分野で研究対象となってきた. 本稿では, 天然物-生薬-医薬品という流れに沿って, 表題の内容の下, 生薬に関する分野の一端を垣間見て, 若干のことを解説した. 2. 天然物の利用 天然物のなかで人が経口的にとるものは食品と医薬品である. それを一つの角度からみると, 人類は天然物を食品的なものとして, あるいは医薬品的なものとして利用してきて, 歴史上のある時期にそれぞれの国や自治区単位でそれらを食品とか医薬品とかに区分したこととなる. この前者の段階での利用の仕方は天然物の本質に基づくものであり, 後者の区分は国がそれを参考として行政的に編みだした約束ごとである. 本邦では医薬品は薬事法第2条と「医薬品の範囲に関する基準」1)によって判定される品目である. この基準における判定は, その物の成分本質, 効能効果, 形状および用法用量などを総合して行う. 以下, 物の成分本質について筒単にその分類を記す. (1)その成分, 本質が医薬品として使用されている物 a. もっぱら医薬品として使用される物-アスピリン, ジャコウ, センキュウ,… b. 主として医薬品として使用される物-ビタミン, クコシ, 朝鮮ニンジン, … c. 通常の食生活において食品としても使用される物-ニンニク, ハチミツ, …(2)その成分, 本質が伝承, 慣行等により医薬品的効果を有するものと期待して使用されている物 a. 通常の食生活において食品の範囲と認められない物-コンフリー, 蝸牛末, … b, 通常の食生活において食品の範囲と認められる物-スッポン, 小麦胚芽, …(3)その成分, 本質が社会通念上およそ医薬品とも食品とも認められない物-木炭, 岩石の粉, …この分類は上で述べた約束ごとであるから, 必ずしも外国の判断基準と合うとは限らない. 3. 生薬生薬製剤の種類 局方の生薬総則第1項によれば, 局方の生薬は動植物の薬用とする部分, 細胞内容物, 分泌物, 抽出物または鉱物などをいう. これは局方生薬についてであるが, 広く生薬全般の定義としてよいであろう. なお, これに従えば精油 や油脂も生薬になるので, 生薬総則と生薬試験法を適用する品目を狭義の生薬とみなすのも一便法である. 前章の判定により医薬品の範疇に入る天然物のうち, 医薬品として定められた一定の規格を満たすものは生薬となる. 生薬は粉末形態を除くと, その形として最終的医薬品(ただちに服用できる形)であることはなく, 何かしらの製剤の形をとる. この意味で, 生薬は製剤原料となる. 医薬品には効能効果は必須の要因であるが, 製剤原料であれば必ずしもそうでなくてよい. 生薬を原料とした製剤はエキス剤, 顆粒剤, 丸剤, 散剤, 錠剤, 浸剤, 煎剤, チンキ剤, 流エキス剤, 軟膏剤などがおもなものである. 生薬製剤の特徴として, ロートエキスなどの生薬単味の製剤のほかに, 複数の生薬からなる製剤を多数挙げることができる. 漢方処方や伝統的な家庭薬処方に基づいた製剤がその例である. 一方, 化学薬品と生薬からなる配合製剤も少なくない. |
---|---|
ISSN: | 0037-4377 |