S2-3 遺伝性褐色細胞腫の遺伝子解析 わが国の現状, その有用性と限界について
【背景】 褐色細胞腫の遺伝子診断は, 今世紀に入り大きく概念が変わった分野である. 有名な‘10%ルール’は20世紀までの概念である. その理由は, (1)SDHB・SDHD遺伝子が発見され全褐色細胞腫のそれぞれ5%を占めること(+10%), (2)臨床的に散発性(ASP)でも10%で遺伝性の可能性があること(+10%)により遺伝性の頻度20~30%と上昇した. (3)悪性化と密接に関係するSDHBが判明した. SDHB・SDHD遺伝は, ミトコンドリア内膜に存在しTCA回路および電子伝達系酵素複合体の一部でもあるコハク酸脱水素酵素のサブユニットをコードする遺伝子であり, 家族性褐色細胞腫・パ...
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Veröffentlicht in: | 家族性腫瘍 2009, Vol.9 (2), p.111-111 |
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Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【背景】 褐色細胞腫の遺伝子診断は, 今世紀に入り大きく概念が変わった分野である. 有名な‘10%ルール’は20世紀までの概念である. その理由は, (1)SDHB・SDHD遺伝子が発見され全褐色細胞腫のそれぞれ5%を占めること(+10%), (2)臨床的に散発性(ASP)でも10%で遺伝性の可能性があること(+10%)により遺伝性の頻度20~30%と上昇した. (3)悪性化と密接に関係するSDHBが判明した. SDHB・SDHD遺伝は, ミトコンドリア内膜に存在しTCA回路および電子伝達系酵素複合体の一部でもあるコハク酸脱水素酵素のサブユニットをコードする遺伝子であり, 家族性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群(hereditary pheochromocytoma-paraganglioma syndrome:HPPS)の原因である. SDHBの変異は腹部のパラガングリオーマを初発とし, その後高率に遠隔転移(悪性化)を引き起こす. SDHDの変異は頚部多発性パラガングリオーマを主症状とするが, 悪性化は稀である. 【成績】 25例の悪性褐色細胞腫でSDHBの検索を行った結果, 腹部のパラガングリオーマが初発であった13例中6例で変異を同定している(6/13). 一方, 副腎初発例は12例中2例で変異を同定できた(2/12). 【結論と対策】 本邦の症例においてもSDHBの変異陽性悪性褐色細胞腫は腹部のパラガングリオーマを初発とする例が多い. 発表者は, 日本国内での褐色細胞腫・パラガングリオーマの遺伝的背景を調査する研究をスタートさせている. 最初の診断時に良性と悪性の判断が困難である点が悪性診断の問題点であることから, 今後SDHBを指標とする悪性化の早期発見とそれに基づく早期治療が期待される. 一方, 現時点でのSDHB遺伝子解析はエビデンスに乏しく臨床的有用性が確立していないため研究的な検査といわざるを得ない. SDHDの変異は本邦では数例報告されているのみである. |
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ISSN: | 1346-1052 |