B-2 ApcMin/+マウスを用いた炎症関連大腸発がんモデルとその化学予防

炎症とがんの関係はVirchowの時代から古くて新しいテーマであり, Helicobacter pylori胃炎, ウイルス性肝炎, 炎症性腸疾患などの慢性炎症が, がん発生のリスク増大に関わることが知られている. 我々は大腸がん発生における炎症の関与を研究するために, 短期間に高頻度で大腸がんを誘発できる炎症関連マウス大腸発がんモデルを作出し, 炎症関連大腸発がん機構の解析および化学予防物質の検索を行っている. 家族性大腸腺腫症(FAP)の研究にはAPC遺伝子変異をもつApcMin/+マウスなどが用いられているが, これらマウスにおける腫瘍発生部位は主に小腸であり, 大腸ではその前駆病変であ...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:家族性腫瘍 2008, Vol.8 (2), p.93-93
1. Verfasser: 甲野裕之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:炎症とがんの関係はVirchowの時代から古くて新しいテーマであり, Helicobacter pylori胃炎, ウイルス性肝炎, 炎症性腸疾患などの慢性炎症が, がん発生のリスク増大に関わることが知られている. 我々は大腸がん発生における炎症の関与を研究するために, 短期間に高頻度で大腸がんを誘発できる炎症関連マウス大腸発がんモデルを作出し, 炎症関連大腸発がん機構の解析および化学予防物質の検索を行っている. 家族性大腸腺腫症(FAP)の研究にはAPC遺伝子変異をもつApcMin/+マウスなどが用いられているが, これらマウスにおける腫瘍発生部位は主に小腸であり, 大腸ではその前駆病変であるdysplastic aberrant crypt fociやβ-catenin-accumulated cryptsが多く存在するものの, 腫瘍の発生頻度は低いことが知られている. そこで我々はApcMin/+マウスに大腸炎誘発物質dextran sodium sulfate(DSS)を投与し, 大腸病変への影響について検討を行った. その結果, ApcMin/+マウスではDSS投与により大腸腺がんの発生頻度, 発生個数が有意に増加し, 発生した腺がんでは, 免疫組織学的にβ-catenin, iNOS, COX-2などで陽性を示すことを見出した. さらに, 免疫組織学的解析で陽性を示したiNOSに注目し, iNOS選択的阻害薬ONO-1714による炎症関連マウス大腸発がん修飾作用についても検討を行った. ApcMin/+マウスではONO-1714投与により個体あたりの発生個数が有意に減少し, また大腸粘膜のCOX-2, TNFα, IL-1βmRNAの有意な発現低下, 血清トリグリセリド値の有意な低下が認められた. これらの結果から, ApcMin/+マウスにおける炎症関連大腸発がんにおいては, 腫瘍発生にiNOSが関与していることが示唆され, iNOS選択的阻害薬は炎症関連大腸がんの化学予防のために有用である可能性が考えられた. 本演題では, 炎症関連マウス大腸発がんに関わる我々の最近の成果を中心に報告する.
ISSN:1346-1052