4-3 ヒト家族性腫瘍のモデルとしてのTslc1/Cadm1遺伝子欠損マウスの解析

ヒトの癌発生の律速段階となるのは,癌遺伝子,癌抑制遺伝子等の限られた数の異常であり,このような遺伝子の変異を胚細胞に受け継いだ場合には家族性腫瘍を生じる.しかし既知の家族性腫瘍以外にも,原因遺伝子,関連遺伝子が不明の高発癌家系が存在し,罹患同胞対解析や関連解析等による検索が行なわれている.一方,遺伝子欠損マウスに高率に腫瘍が発生する場合には,ヒトの家族性腫瘍の候補遺伝子になると考えられる.我々は以前,ヒト培養肺癌細胞のマウスでの腫瘍原性の抑制を指標として,第11染色体q23上の新規癌抑制遺伝子TSLC1/CADM1を同定した.TSLC1は免疫グロブリン様細胞接着分子をコードし,多くのヒトの癌で...

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Veröffentlicht in:家族性腫瘍 2007, Vol.7 (2), p.151-151
Hauptverfasser: 山田大介, 永田政義, 尾鼻孝滋, 増田万里, 市原博美, 増田智子, 吉田緑, 堤雅弘, 北村唯一, 村上善則
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:ヒトの癌発生の律速段階となるのは,癌遺伝子,癌抑制遺伝子等の限られた数の異常であり,このような遺伝子の変異を胚細胞に受け継いだ場合には家族性腫瘍を生じる.しかし既知の家族性腫瘍以外にも,原因遺伝子,関連遺伝子が不明の高発癌家系が存在し,罹患同胞対解析や関連解析等による検索が行なわれている.一方,遺伝子欠損マウスに高率に腫瘍が発生する場合には,ヒトの家族性腫瘍の候補遺伝子になると考えられる.我々は以前,ヒト培養肺癌細胞のマウスでの腫瘍原性の抑制を指標として,第11染色体q23上の新規癌抑制遺伝子TSLC1/CADM1を同定した.TSLC1は免疫グロブリン様細胞接着分子をコードし,多くのヒトの癌でメチル化等の2ヒットにより不活化する.そこで,その個体レベルでの意義を明らかにするためにTslc1-/-マウスを作成した.Tslc1-/-マウスは正常に発生したが雄性不妊を示し,成熟途中の精子細胞とセルトリ細胞との接着の破綻が原因であった.さらに15ヶ月間飼育すると,Tslc1-/-マウス30匹中10匹に肺腺腫が生じ,その中の1例は肺腺癌を伴った.一方,Tslc1+/+マウスでは20匹中1匹に顕微鏡的に肺腺腫を認めたのみであった.以上の結果は,男性不妊と腺腫,腺癌を表現型とするヒト疾患の存在を示唆するものである.Tslc1+/-マウスの解析,並びにヒト不妊症との関連を検索中である.
ISSN:1346-1052