大腸全摘術後に肝, 肺転移をきたした家族歴のない大腸腺腫症の1例

(症例)42才男性. 大腸癌, 直腸癌の家族歴なし. 配偶者との間に16才, 14才の2子がある. 97年, 38才の時に便潜血反応陽性の精査により大腸腺腫症と診断され, 大腸全摘術を受ける. 摘出標本には密生するポリープのほか, 一部smに浸潤するadenocarcinomaを認めた. 2年後の40才の時に肝転移を認め, 拡大左葉切除術を受け, 更に2年後のA年には肺転移を認め, 当科に紹介入院となる. 肺転移は右肺上葉・中葉境界と左肺S3, S10の3箇所であり, 定位照射による治療を予定している. (考察)臨床的に診断される家族性大腸腺腫症(EAP)の30-40%は家族歴が明らかでない孤...

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Hauptverfasser: 酒寄真人, 吉岡孝志, 村川康子, 柴田浩行, 加藤俊介, 佐竹宣明, 石岡千加史, 金丸龍之介
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:(症例)42才男性. 大腸癌, 直腸癌の家族歴なし. 配偶者との間に16才, 14才の2子がある. 97年, 38才の時に便潜血反応陽性の精査により大腸腺腫症と診断され, 大腸全摘術を受ける. 摘出標本には密生するポリープのほか, 一部smに浸潤するadenocarcinomaを認めた. 2年後の40才の時に肝転移を認め, 拡大左葉切除術を受け, 更に2年後のA年には肺転移を認め, 当科に紹介入院となる. 肺転移は右肺上葉・中葉境界と左肺S3, S10の3箇所であり, 定位照射による治療を予定している. (考察)臨床的に診断される家族性大腸腺腫症(EAP)の30-40%は家族歴が明らかでない孤発例であるとされる. 本症例も大腸腺腫の家族歴を認めず, この家系で最初に発症したFAP患者である. FAPの約90%にはAPC遺伝子変異が検出され, その大部分はナンセンス変異またはフレームシフト変異である. 本症例ではAPC遺伝子のexon15のmutation cluster regionを含む翻訳領域(codon 654-1748)にStop Codon assayによる遺伝子診断を行ったが, 変異は検出されなかった. APC遺伝子の他の翻訳領域に変異が存在する可能性が高いと考えられ, これら未検索の翻訳領域に対しても同様にStop Codon assayを予定している. 発端者の第1子(16才), 第2子(14才)は臨床的に大腸癌のリスクが高いと考えられ, 発端者の大腸腺腫症が密生型であったことを考慮すれば, 下部消化管内視鏡等によるスクリーニングを早急に開始すべき時期である. また, 発端者の遺伝子診断の結果によっては, 2子の発症前(保因者)診断についての検討も必要である.
ISSN:1346-1052