色素性乾皮症から学ぶ

一世紀以上に及ぶ皮膚科医の色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum, XP)の詳細な臨床観察と1960年代の後半から活発化してきた光生物学領域の研究者による分子・遺伝子レベルの成果を通して太陽紫外線が人の健康に与える有害性について多くの事実を学んできた. 日焼けの機序, 良性・悪性腫瘍の発症から免疫抑制にもDNA修復が関与していることが明らかにされている. 1970年代にはXPの相補群A~Gが認知された. 1989年にTanakaらによりXPA群の遺伝子がクローニングされ, その後各群の遺伝子が同定されている. しかし, XPE群については現在も詳細は不明である. これらXP相...

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Hauptverfasser: 市橋正光, 上田正登, 上田隆宏, 近藤眞史, Arief Budiyanto, Keneth Kraemer
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:一世紀以上に及ぶ皮膚科医の色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum, XP)の詳細な臨床観察と1960年代の後半から活発化してきた光生物学領域の研究者による分子・遺伝子レベルの成果を通して太陽紫外線が人の健康に与える有害性について多くの事実を学んできた. 日焼けの機序, 良性・悪性腫瘍の発症から免疫抑制にもDNA修復が関与していることが明らかにされている. 1970年代にはXPの相補群A~Gが認知された. 1989年にTanakaらによりXPA群の遺伝子がクローニングされ, その後各群の遺伝子が同定されている. しかし, XPE群については現在も詳細は不明である. これらXP相補群遺伝子は除去修復の複雑な機構をになう重要な因子として機能している. 一方, XPバリアントでは複製後修復に関与するポリメラーゼηが変異していることが1999年にHanaokaらのグループにより明らかにされた. XPA, F及びバリアントは日本人に多い. 特にXPAは神経症状を伴い多くは20歳までに老化症状が発現し死亡する. XPAの神経症状の発症機序として細胞内代謝で生じる活性酸素による酸化塩基(8-hydroxydeoxyguanosine, 8-OHdG)の修復が不完全なために神経細胞が死滅するためとの考えがあり, 除去修復関連蛋白質群の重要性が改めて理解できる. また, XPAは強い日焼け反応を示すが, これも残存するDNAの傷が引き金となり, COX2mRNAの活性化によりPGE_2 が多量に作られるためと考えられる. DNA修復異常によりサイトカインIL-10の発現が亢進し, 免疫抑制と抗原特異的なトレランスが誘導され発癌や感染症の発症に深くかかわっていると考えられる. XPの紫外線発癌予防には乳児期からの徹底した遮光が最も重要であるが, DNA損傷の修復をたかめる薬剤や化学物質の外用療法の可能性を求めて, 米国で治験が進められている. また現在遺伝子療法の基礎研究が開始されている.
ISSN:1346-1052