8. 小脳失調と末梢神経障害を来した1-ブロモプロパン中毒の1例

患者は43歳男性. 急激に進行する歩行障害を主訴に近医受診. 失調歩行とCl178と高値を認め, 当科紹介入院. 全身の深部反射の減弱, 失調歩行あり自立歩行不可能であった. 髄液検査は異常なし, 頭部MRIで小脳萎縮あり. 末梢神経伝導速度検査では軽度の軸索障害が疑われた. 患者は工場で機械洗浄業務に従事し有機溶剤を使用しており, 主成分は1-ブロモプロパン(1BP)であった. 労働時間が長い, マスクを交換するタイミングが遅い, 手袋が破け溶剤が手に付着するなど作業状況に問題があった. ブロム血中濃度は51mg/dl(基準値0.5mg/dl)と高値で, 1BP中毒症が疑われた. ブロムによ...

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Veröffentlicht in:産業衛生学雑誌 2006, Vol.48 (3), p.83-84
Hauptverfasser: 渡邉幸弘, 中山英己, 杉本昌宏, 酒井直樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:患者は43歳男性. 急激に進行する歩行障害を主訴に近医受診. 失調歩行とCl178と高値を認め, 当科紹介入院. 全身の深部反射の減弱, 失調歩行あり自立歩行不可能であった. 髄液検査は異常なし, 頭部MRIで小脳萎縮あり. 末梢神経伝導速度検査では軽度の軸索障害が疑われた. 患者は工場で機械洗浄業務に従事し有機溶剤を使用しており, 主成分は1-ブロモプロパン(1BP)であった. 労働時間が長い, マスクを交換するタイミングが遅い, 手袋が破け溶剤が手に付着するなど作業状況に問題があった. ブロム血中濃度は51mg/dl(基準値0.5mg/dl)と高値で, 1BP中毒症が疑われた. ブロムによる偽性高Cl血症と思われた. 輸液と利尿剤による強制利尿を行った. 血清ブロム濃度は漸減, 神経症状も徐々に改善し, 10日後に自立歩行, 片足立ちが可能となり退院. 1BPはフロン代替溶剤として広く普及している. 1BP中毒の日本人での報告は1例もなく, ここに報告する.
ISSN:1341-0725