1.スチレン曝露労働者の尿中代謝物と遺伝子多型の関連

【目的】スチレンは, プラスチック, 合成ゴムおよびポリエステル樹脂の原料として広く使用される化学物質である. スチレンを代謝する多くの酵素の代謝活性に影響すると考えられる遺伝子多型が存在する. 解毒代謝機能の個体差は, 高感受性者の予知と高危険群への障害予防対策のひとつの指標となることが考えられる. 本研究ではスチレン曝露への遺伝子多型の影響を明らかにすることを目的に, スチレン曝露労働者においてスチレン代謝に関する酵素の遺伝子多型が尿中代謝物及び神経毒性に関連があるかどうか検討した. 【対象と方法】繊維ガラス強化プラスチック(FRP)ボート製造工場に従事した77名男性労働者に生物学的モニタ...

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Veröffentlicht in:産業衛生学雑誌 2005-03, Vol.47 (2), p.93-93
Hauptverfasser: 馬 明月, 梅村朋弘, 森ゆうこ, 貢 英彦, 西條泰明, 佐田文宏, 岸 玲子
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【目的】スチレンは, プラスチック, 合成ゴムおよびポリエステル樹脂の原料として広く使用される化学物質である. スチレンを代謝する多くの酵素の代謝活性に影響すると考えられる遺伝子多型が存在する. 解毒代謝機能の個体差は, 高感受性者の予知と高危険群への障害予防対策のひとつの指標となることが考えられる. 本研究ではスチレン曝露への遺伝子多型の影響を明らかにすることを目的に, スチレン曝露労働者においてスチレン代謝に関する酵素の遺伝子多型が尿中代謝物及び神経毒性に関連があるかどうか検討した. 【対象と方法】繊維ガラス強化プラスチック(FRP)ボート製造工場に従事した77名男性労働者に生物学的モニタリングによるスチレン曝露測定, 終業時採尿と採血を行った. 尿サンプル中のマンデル酸(MA)及びフェニルグリオキシル酸(PGA)を, クレアチニン重量当たりの量として求めた. PCRでスチレン代謝との関連が考えられるCYP2E1, GSTM1, GSTT1, GSTP1, EPHX1の遺伝子多型を分析した. 【結果】尿中代謝物と遺伝子多型との関連について, CYP2E1野生型(low activity)は, 変異型+ヘテロ型群より尿中MA, PGA, MA+PGAが有意に低かった(スチレン曝露量, BMI, 飲酒, 喫煙習慣で調整). EPHX1-exon4の野生型(low activity)は変異型+ヘテロ型群より尿中MA, PGA, MA+PGAがやや低かったが, 有意ではなかった(P=0.104, 0.307, 0.133). GSTファミリーに関する遺伝子多型の影響は認めなかった. CYP2E1遺伝子多型とEPHX1遺伝子多型の組み合わせにより, 代謝がhigh activityの群に比べ, low activityの群は有意に尿中代謝物の排出が少なかった. 【まとめ】第1相薬物代謝酵素のCYP2E1と第2相のEPHX1遺伝子多型の組み合わせにより, スチレン代謝産物の尿中への排泄が異なり, これらの遺伝子多型がスチレン代謝に影響することが示唆された.
ISSN:1341-0725