歯科技工士の作業環境評価

歯科技工士(以下技工士)は歯の補綴物, 充填物または矯正装置の製作, 修理を業務としている. 全技工士の約半数が就労している技工所の多くは個人経営で, 労働環境も十分ではない. そこで本研究では技工士の作業環境条件の現況と問題点を検討する目的で作業環境アンケート調査を実施した. [方法]某地区歯科技工士会に所属する会員134名を対象に, 自記式アンケートにより, 作業場の面積や天井高などの作業場の規模について4項目, 換気扇数や局所排気装置などの換気設備とその使用状況について5項目, 温度・湿度条件, 照明, 作業スペース, 粉じん環境について4段階で満足度を回答してもらった. (回答率84%) [結果]対象全体の平均従事年数は17.8年. 1職場当たりの技工士数は平均2.6人だった. 1人技工士は全体の45%であり, 2人以下の職場が70%を占めた. 作業場の規模については, 技工所と歯科医院間で平均技工士数では両群に差はなかったが, 作業場面積は技工所の方が有意に広く, 作業場の区画についても技工所の方が有意に高い割合で区画がされていた. 換気設備については, 局所排気装置以外の項目では, 技工所の方が歯科医院よりも換気設備が有意に優れていた. しかし, 局所排気装置が設置されていない職場がまだ3割程度存在した. 満足度は全体的に歯科医院の方が技工所より低く, 「温度・湿度」と「照明」条件では統計学的有意差を認めた. 「作業スペース」および「粉じん」条件については, 歯科医院の方が技工所より満足度が低い傾向にあったが有意差は認めなかった. [まとめ]技工士の作業環境に対する満足度は全般的に低く, 「作業スペース」や「粉じん環境」で不満の割合が高かった. 職場別では歯科医院の方が, 技工所よりも不良であった. 今後は歯科医院や技工所の開設者に対して, 啓蒙や教育により作業環境条件の重要性を認識させることが必要である.