有機溶剤中毒における中枢神経機能の定量的評価

[対象] 鉄道車両の検査・修理および車両外壁の吹き付け塗装, 配電盤の仕上げ塗装をしている塗装職場および接着剤, 塗料等の原料となる化学製品を製造している化学工場の塗装職場で働く男性作業者48名と, その対照群として年齢・教育歴をマッチングさせた溶剤曝露のない車両検査・事務などの男性48名. [方法] 神経テストバッテリーおよび自覚症状, 心理検査(参考文献参照). [結果] 曝露群全体(N=48)と対照群全体(N=48)で対応のあるt検定で比較したところ言語, 符号, サンタアナ左で有意差が認められた. さらに, 年齢などの交絡因子を調整するため, 多重回帰分析を行なったところ, 神経テストバッテリーにおいて累積曝露指数との間に言語と数唱で有意な低下が認められた. [考察]今回はどの程度の有機溶剤曝露により, 神経テストバッテリー等に影響がでるのかを検討したところ累積曝露指数18以上で言語, 数唱に有意な低下がみられた. 今後はさらに1年に何か月, あるいは, 1日に何時間の曝露というような, 実労働時間を加味した曝露指標を用いて行動影響を評価していきたい. [参考文献]現場の有機溶剤中毒検診における中枢神経機能の定量的評価に関する研究－特に尿中代謝物濃度との関係－. 産業医学ジャーナル, 1994;17(3)：68-75.