PAC1受容体をターゲットとした低分子抗うつ薬の開発戦略
大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)は全世界で3億人近くが罹患する精神疾患であり,社会に深刻な影響を及ぼしている.脳内アミンを標的とした従来の抗うつ薬は,治療効果が得られるまでに要する期間が長く,約3割の患者が抵抗性を示すことなどが報告されている.そのため,治療抵抗性うつ病に対しても有効で,モノアミン仮説とは異なる新しい機序の治療薬の開発が求められている.著者らを含む多くの研究グループにより,PACAP(脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド)とその受容体の一つであるPAC1受容体がMDDのようなストレス関連疾患の病因に密接に関連することが確立さ...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2024/07/01, Vol.159(4), pp.219-224 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 大うつ病性障害(major depressive disorder:MDD)は全世界で3億人近くが罹患する精神疾患であり,社会に深刻な影響を及ぼしている.脳内アミンを標的とした従来の抗うつ薬は,治療効果が得られるまでに要する期間が長く,約3割の患者が抵抗性を示すことなどが報告されている.そのため,治療抵抗性うつ病に対しても有効で,モノアミン仮説とは異なる新しい機序の治療薬の開発が求められている.著者らを含む多くの研究グループにより,PACAP(脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド)とその受容体の一つであるPAC1受容体がMDDのようなストレス関連疾患の病因に密接に関連することが確立されつつある.したがって,PAC1受容体はストレス性精神疾患の治療において有望なターゲットとなることが強く示唆される.このような背景のもと,著者らは非ペプチド性で,新規の低分子・高親和性PAC1受容体拮抗薬の開発を行った.本研究では,新規PAC1受容体拮抗薬がMDD治療の新たな選択肢となることを目指し,マウスを用いた行動薬理学実験を行うことで,我々の新規PAC1受容体拮抗薬が高い安全性プロファイルを持つ抗うつ薬となる可能性があることを示した.本稿では,新規PAC1受容体拮抗薬の開発の経緯や急性ストレスモデルマウスに対する効果について紹介したい. |
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ISSN: | 0015-5691 1347-8397 |
DOI: | 10.1254/fpj.24008 |