多価不飽和脂肪酸およびFABPに着目した精神疾患の病態解明
多価不飽和脂肪酸(PUFA)は脳の発達と機能に重要な役割を果たしている.近年の研究により,脳内PUFAのバランスの乱れが,自閉症や統合失調症などの精神疾患と関連していることが示されている.しかし,PUFAが脳機能に及ぼす効果の細胞および分子レベルのメカニズムはいまだ不明な点が多い.PUFAは水に不溶性であるため,細胞内輸送にはキャリアーが必要である.脂肪酸結合タンパク質(FABP)は細胞内で遊離脂肪酸に結合し,その細胞内輸送,シグナル伝達,遺伝子転写に関与する脂質シャペロンとして機能する.著者らは,FABPによる脳内PUFAの恒常性と神経可塑性の関係に焦点を当てた.我々は,n-6系PUFAに親...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2024/03/01, Vol.159(2), pp.118-122 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
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Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 多価不飽和脂肪酸(PUFA)は脳の発達と機能に重要な役割を果たしている.近年の研究により,脳内PUFAのバランスの乱れが,自閉症や統合失調症などの精神疾患と関連していることが示されている.しかし,PUFAが脳機能に及ぼす効果の細胞および分子レベルのメカニズムはいまだ不明な点が多い.PUFAは水に不溶性であるため,細胞内輸送にはキャリアーが必要である.脂肪酸結合タンパク質(FABP)は細胞内で遊離脂肪酸に結合し,その細胞内輸送,シグナル伝達,遺伝子転写に関与する脂質シャペロンとして機能する.著者らは,FABPによる脳内PUFAの恒常性と神経可塑性の関係に焦点を当てた.我々は,n-6系PUFAに親和性の高いFABP3が,成体マウスの前帯状皮質(ACC)のγ-アミノ酪酸(GABA)抑制性インターニューロンで強く発現していること見出した.ACCは認知と情動行動の調整に関与する辺縁系の一部である.FABP3欠損マウスでは,ACCにおいてGABA合成および抑制性シナプス伝達が過剰となる.一方,n-3系PUFAに強く結合するFABP7も脳内において重要である.我々はFABP7がアストロサイトにおいて脂質ラフト機能を制御し,FABP7を欠損したアストロサイトは,外部刺激に対する応答に変化をもたらすことを見出した.さらにFABP7欠損マウスは,錐体細胞ニューロンの樹状突起形成が異常となり,スパイン密度と興奮性シナプス伝達の低下を示す.本稿では,PUFAやFABPと人間の精神障害との関連について,特にFABP3およびFABP7を中心に,脳内での機能解明における最近の進展について紹介する. |
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ISSN: | 0015-5691 1347-8397 |
DOI: | 10.1254/fpj.23093 |