ミクログリアを標的とした神経疾患の治療法

ミクログリアは,脳内免疫を担当する唯一のグリア細胞である.ミクログリアは常に脳内の環境を監視し,異常を探知するとダメージを受けた細胞を貪食し,液性因子(炎症性因子,細胞障害性因子,栄養因子など)の産生・放出等を行い,組織恒常性の維持に貢献する.最近,アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患において,ミクログリアが過剰に活性し,正常な神経細胞機能を障害することで,これら疾患の発症及び増悪を引き起こすことが明らかになってきた.ミクログリアの生存にはコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)シグナルが必須である.従ってCSF1R拮抗薬を用いると,過剰活性化したミクログリア除去,除去/自己再生...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2023/09/01, Vol.158(5), pp.353-358
Hauptverfasser: パラジュリ, ビージェイ, 小泉, 修一
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:ミクログリアは,脳内免疫を担当する唯一のグリア細胞である.ミクログリアは常に脳内の環境を監視し,異常を探知するとダメージを受けた細胞を貪食し,液性因子(炎症性因子,細胞障害性因子,栄養因子など)の産生・放出等を行い,組織恒常性の維持に貢献する.最近,アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患において,ミクログリアが過剰に活性し,正常な神経細胞機能を障害することで,これら疾患の発症及び増悪を引き起こすことが明らかになってきた.ミクログリアの生存にはコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)シグナルが必須である.従ってCSF1R拮抗薬を用いると,過剰活性化したミクログリア除去,除去/自己再生によるリセット,または除去後の新しいミクログリア移植等のミクログリア操作が可能となる.これらは,脳疾患の新しい治療戦略として有望視され,盛んに基礎研究が行われている.本稿では,様々な中枢神経系疾患におけるミクログリアの役割,また治療戦略としてミクログリア除去,リセット及び移植に関する最新の知見を紹介する.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.23005