異分野融合が切り拓く脳オルガノイド生物学

胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は身体を構成するあらゆる細胞種へと分化できる多能性を有しているため,再生医療や様々な疾患・発生研究に広く利用されてきた.近年,ES細胞やiPS細胞から生体の様々な組織をin vitroにおいて3次元で再構成するオルガノイド研究が構成論的アプローチとして注目を集めている.オルガノイドは生体内の組織が有する多様な細胞種や組織構築,さらには生体機能の一部を模倣することができるため,より高度なin vitroのモデルとして利用可能である.しかし,その複雑さゆえに従来の幹細胞生物学の解析手法だけでは,オルガノイドの性能を十分に評価することができないと...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2023, Vol.158(1), pp.64-70
Hauptverfasser: 小寺, 知輝, 小坂田, 文隆
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は身体を構成するあらゆる細胞種へと分化できる多能性を有しているため,再生医療や様々な疾患・発生研究に広く利用されてきた.近年,ES細胞やiPS細胞から生体の様々な組織をin vitroにおいて3次元で再構成するオルガノイド研究が構成論的アプローチとして注目を集めている.オルガノイドは生体内の組織が有する多様な細胞種や組織構築,さらには生体機能の一部を模倣することができるため,より高度なin vitroのモデルとして利用可能である.しかし,その複雑さゆえに従来の幹細胞生物学の解析手法だけでは,オルガノイドの性能を十分に評価することができないという課題にも直面している.近年,幹細胞生物学に加えて様々な研究分野と融合することにより,従来よりもはるかに多様かつ複雑な生命現象をオルガノイドを用いて解き明かすことが可能になりつつある.本稿では主に脳オルガノイドに焦点をあて,機械学習,遺伝子工学,イメージングとの融合研究の代表例を挙げ,そこから得られた知見を紹介したい.また,異分野融合が持つ可能性と今後の展望についても議論する.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.22097