見たいものを見える化する非線形ラマン散乱顕微鏡の薬理学研究への応用

薬理学研究においては,生体試料において,薬剤そのものや,薬剤に対する応答を「見て」「測る」ことが非常に重要である.このような可視化研究の実現のため,これまでに数多くの蛍光色素・タンパク質などが開発・応用され,多くの分子や現象が観察できるようになってきた.しかし,生体における可視化には蛍光イメージングの発展をもってしても超えられない多くの壁があり,現在も見えない薬理学的対象物・現象は多い.一方,蛍光や発光が主として使われる生命科学領域から離れると,他にも多くの光学現象があることが分かる.そしてこれらの光学現象は,それぞれの物理化学的性質により,独自の生物学的現象の可視化を実現する可能性がある.こ...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2022, Vol.157(5), pp.371-375
1. Verfasser: 塗谷, 睦生
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:薬理学研究においては,生体試料において,薬剤そのものや,薬剤に対する応答を「見て」「測る」ことが非常に重要である.このような可視化研究の実現のため,これまでに数多くの蛍光色素・タンパク質などが開発・応用され,多くの分子や現象が観察できるようになってきた.しかし,生体における可視化には蛍光イメージングの発展をもってしても超えられない多くの壁があり,現在も見えない薬理学的対象物・現象は多い.一方,蛍光や発光が主として使われる生命科学領域から離れると,他にも多くの光学現象があることが分かる.そしてこれらの光学現象は,それぞれの物理化学的性質により,独自の生物学的現象の可視化を実現する可能性がある.このような可能性に満ちた光学現象の薬理学研究への利用は今も非常に限られているが,これらの能力が引き出されることで,これまで見る・測ることが困難であった対象の可視化解析が実現し,薬理学研究に新たな展開が生まれるものと期待される.そこで本稿では,蛍光・発光以外のイメージング技術として,分子に含まれる官能基の振動情報を可視化するラマン散乱顕微鏡の薬理学研究への応用について紹介する.特に,組織透過性の高い近赤外光の多光子現象によりこれを実現する非線形ラマン散乱顕微鏡と,これまでできなかった特異的な標識化を実現するラマンタグについて,見たいものを見える化する新たな技術として,近年の薬理学研究への応用例と共に紹介する.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.22060