重症喘息のステロイド抵抗性とその制御
喘息全般の治療効果,患者QOLは向上したものの,1~2割を占める重症喘息ではすべての治療薬を併用してもなお日常的に強い症状に悩まされていることは大課題である.21世紀に入り米国のSARP,欧州のENFUMOSA studyが立ち上がり,重症喘息の病態解析が精力的に進められてきた.IgE,TNF,IL-5,IL-4,IL-13,TSLPに対する抗体や阻害薬の臨床レベルでの知見も蓄積しつつある.一部の分子標的薬では,重症喘息症例を対象に,呼吸機能の改善や,急性増悪の減少が報告されている.これまでサイトカインは慢性炎症に関与すると想定されてきたが,いかに呼吸機能,急性増悪に関与するのか,そのpath...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2022, Vol.157(5), pp.293-298 |
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Hauptverfasser: | , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 喘息全般の治療効果,患者QOLは向上したものの,1~2割を占める重症喘息ではすべての治療薬を併用してもなお日常的に強い症状に悩まされていることは大課題である.21世紀に入り米国のSARP,欧州のENFUMOSA studyが立ち上がり,重症喘息の病態解析が精力的に進められてきた.IgE,TNF,IL-5,IL-4,IL-13,TSLPに対する抗体や阻害薬の臨床レベルでの知見も蓄積しつつある.一部の分子標的薬では,重症喘息症例を対象に,呼吸機能の改善や,急性増悪の減少が報告されている.これまでサイトカインは慢性炎症に関与すると想定されてきたが,いかに呼吸機能,急性増悪に関与するのか,そのpathwayの解明も興味深い.われわれは厚生労働科学研究「重症・難治性喘息の病因・病態の解明に関する研究」を実施し,わが国のステロイド依存性喘息約100症例を登録した.従来は,長期のコントロール不良が重症化の原因と推測されてきたが,約3割の症例で発症後2~3年以内と短期間にステロイド依存に陥っており,重症喘息には軽症喘息とは異質な病態(ステロイド抵抗性)が,発症早期から関与していることが明らかになった.T細胞のステロイド抵抗性は,細胞外からの共刺激やサイトカインシグナルによって誘導されることも明らかになった.その阻害は,ステロイド感受性を改善し,ステロイド抵抗性喘息を治療しうる可能性がある.そこで,T細胞クローン移入によるステロイド抵抗性喘息モデルをはじめて樹立し,CTLA4-Igのステロイド感受性回復効果を解析した.加えて,治療抵抗性重症喘息におけるアバタセプトの有効性を検討する探索的比較試験-多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験-を,POC studyとして実施中である.ステロイドが効きにくい病態・機序の解明は,重症喘息の予防,治療に向けた突破口と期待される. |
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ISSN: | 0015-5691 1347-8397 |
DOI: | 10.1254/fpj.22027 |