海馬における脳虚血再灌流後の神経傷害に対するEAAC1の役割
虚血性脳卒中は患者数の多い脳疾患の一つであり,治療後も長期間にわたって後遺症に悩まされることが少なくない.特に,海馬の傷害は認知症に関与するため重大な問題である.このような海馬の神経傷害の原因としては,再灌流後の活性酸素産生の増加や神経細胞内Zn2+ホメオスタシスの破綻が考えられている.一方,グルタチオン(GSH)は,神経細胞内において抗酸化作用を示し神経保護に関与することが知られている.また,神経細胞内のZn2+ホメオスタシスの維持にも関与することから,脳虚血再灌流後の神経傷害に対する内因性神経保護因子として認識されている.GSHは,システイン,グリシン,グルタミン酸の3つのアミノ酸から構成...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2021, Vol.156(1), pp.21-25 |
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Hauptverfasser: | , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 虚血性脳卒中は患者数の多い脳疾患の一つであり,治療後も長期間にわたって後遺症に悩まされることが少なくない.特に,海馬の傷害は認知症に関与するため重大な問題である.このような海馬の神経傷害の原因としては,再灌流後の活性酸素産生の増加や神経細胞内Zn2+ホメオスタシスの破綻が考えられている.一方,グルタチオン(GSH)は,神経細胞内において抗酸化作用を示し神経保護に関与することが知られている.また,神経細胞内のZn2+ホメオスタシスの維持にも関与することから,脳虚血再灌流後の神経傷害に対する内因性神経保護因子として認識されている.GSHは,システイン,グリシン,グルタミン酸の3つのアミノ酸から構成されており,細胞内へのシステイン供給がGSH生合成の律速となっている.神経細胞において,システインの細胞内取り込みは主にexcitatory amino acid carrier type 1(EAAC1)が担っている.このEAAC1は脳内に広く分布しているが,その中でも大脳皮質や海馬などの神経細胞に高発現している.最近,EAAC1欠損マウスならびに脳虚血誘導時刻の異なる一過性脳虚血モデルマウスを用いた検討により,脳虚血再灌流後の海馬の神経傷害に対するEAAC1のGSH合成促進を介した神経保護機能が明らかになってきた.そこで,本稿では,虚血性神経細胞死に対するGSHの神経保護作用をEAAC1に着目しながら概説する. |
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ISSN: | 0015-5691 1347-8397 |
DOI: | 10.1254/fpj.20069 |