脊髄損傷ラットにおけるアドレナリンα1A/D受容体遮断薬およびPDE-5阻害薬の膀胱リモデリングに及ぼす効果

脊髄における排尿薬理機構を検討するために,脊髄損傷(spinal cord injury:SCI)によって引き起こされる膀胱線維化を伴う膀胱リモデリングと,それに対するアドレナリンα1A/D受容体遮断薬(ナフトピジル)およびホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬(タダラフィル)の効果を検討した.SD系メスラットを用い,Normal群(脊髄正常),Vehicle SCI群(Vehicle経口投与),タダラフィルSCI群(タダラフィル5 mg/kg/day経口投与)およびナフトピジルSCI群(ナフトピジル20 mg/kg/day経口投与)の4群で検討した.SCI後2,4,8,12週目に膀胱および尿...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2020, Vol.155(1), pp.10-15
Hauptverfasser: 嘉手川, 豪心, 菅谷, 公男, 吉村, 直樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:脊髄における排尿薬理機構を検討するために,脊髄損傷(spinal cord injury:SCI)によって引き起こされる膀胱線維化を伴う膀胱リモデリングと,それに対するアドレナリンα1A/D受容体遮断薬(ナフトピジル)およびホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬(タダラフィル)の効果を検討した.SD系メスラットを用い,Normal群(脊髄正常),Vehicle SCI群(Vehicle経口投与),タダラフィルSCI群(タダラフィル5 mg/kg/day経口投与)およびナフトピジルSCI群(ナフトピジル20 mg/kg/day経口投与)の4群で検討した.SCI後2,4,8,12週目に膀胱および尿道内圧測定を実施し,1,2,4,8,12週目に摘出膀胱組織内の虚血マーカー(HIF-1α:hypoxia inducible factor 1α,VEGF:vascular endothelial growth factor)および線維化マーカー(TGF-β1:transforming growth factor β1,collagen type 1,collagen type 3)のmRNA発現量と,コラーゲンおよびエラスチン含有量を解析した.Vehicle SCI群ではSCI早期から排尿筋括約筋協調不全(DSD:detrusor-sphincter dyssynergia)パターンを呈し,排尿効率が低下した.TGF-β1とHIF-1α発現量,そしてコラーゲンとエラスチン含有量がSCI早期から増加し,膀胱コンプライアンスはSCI中期をピークに増加したのち低下した.ナフトピジル投与により,Vehicle SCI群で認められたSCI早期のTGF-β1およびHIF-1αの増加,SCI中期のコラーゲン含有量増加,およびSCI後期のDSDと膀胱コンプライアンス低下が抑制された.タダラフィル投与によりVehicle SCI群に認められたSCI早期のTGF-β1の増加,全期間を通したコラーゲン含有量の増加,およびSCI後期の膀胱コンプライアンス低下が抑制された.SCIによりDSDを伴う排尿筋過活動が誘導され,膀胱壁内虚血および膀胱線維化が誘導されることが確認できた.また,α1A/D受容体遮断薬およびPDE5阻害薬ともにSCI後の膀胱線維化および膀胱コンプライアンスの低下を抑制した.また,薬剤によって作用する時期が違うことが示されたことから,さらなる詳細な検討を進めることが,SCI後の膀胱リモデリングを伴う神経因性膀胱に対するきめ細やかな治療につながっていくと期待される.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.19108