特集 排尿障害治療薬の最近の知見 ~基礎・臨床研究から~ 序文
排尿障害治療は, 排尿機能の生理的な役割のみならず病態の複雑さから理解が難しい領域の1つである. また, 本邦において排尿機能を中心に研究している「薬理学」と名のつく教室は当教室を除いてほとんど無く, 泌尿器科関連の教室や企業の研究所が排尿に関する基礎研究を行っているのが現状である. この分野のアカデミアの基礎研究者が少ないことが排尿障害分野の科学的発展を遅れている主要な原因の1つだと筆者は考えている. 最近になり, 過活動膀胱治療薬として従来の抗コリン薬のみならずβ3作用薬が保険適応となった. また, 本邦では前立腺肥大症治療薬ではα1ブロッカー, 5α還元酵素阻害薬と共にPDE5阻害薬が使...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2019-11, Vol.154 (5), p.249-249 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 排尿障害治療は, 排尿機能の生理的な役割のみならず病態の複雑さから理解が難しい領域の1つである. また, 本邦において排尿機能を中心に研究している「薬理学」と名のつく教室は当教室を除いてほとんど無く, 泌尿器科関連の教室や企業の研究所が排尿に関する基礎研究を行っているのが現状である. この分野のアカデミアの基礎研究者が少ないことが排尿障害分野の科学的発展を遅れている主要な原因の1つだと筆者は考えている. 最近になり, 過活動膀胱治療薬として従来の抗コリン薬のみならずβ3作用薬が保険適応となった. また, 本邦では前立腺肥大症治療薬ではα1ブロッカー, 5α還元酵素阻害薬と共にPDE5阻害薬が使用可能である. α1ブロッカーである塩酸タムスロシン・ナフトピジルやシロドシンおよびPDE5阻害薬であるタダラフィルは前立腺肥大症に適応がある. 教科書的には交感神経終末から放出されるノルアドレナリンが尿道や前立腺を収縮させるため, α1ブロッカー投与により尿道や前立腺の抵抗を下げ症状を緩和するとされている. また副交感神経終末から放出される一酸化窒素(NO)が尿道や前立腺を弛緩させる事が知られており, PDE5阻害薬の前立腺肥大症の症状改善における作用機序は尿道や前立腺組織内に豊富にあるPDE5を阻害することにより, cGMP濃度が上昇し尿道・前立腺の平滑筋が弛緩し尿道抵抗を下げるためと考えられている. しかし臨床データの蓄積からこれらの薬剤は排尿(排出)症状のみではなく, 蓄尿症状も緩和することがわかってきた. それではその作用機序はなにか? 最近の基礎研究からこれらの薬剤は骨盤内血流を増加させる事や求心性神経を修飾していることが判明してきた. 本特集ではこれらの疑問に答えるべく高知大・清水翔吾先生, 東京大学(現獨協医科大学)・相澤直樹先生と日本新薬株式会社・山口浩史先生の基礎研究者から最近の研究成果を報告して頂く. さらに, これらの薬の新しい作用機序が徐々に明らかになってきているが, 臨床上の使い分けなどまだ解明できていない点が多々ある. この疑問には臨床医の立場として名古屋大学の松川宣久先生から報告して頂く. 排尿研究に興味を持つ本学会会員基礎研究者の新たな参入を切望している. 本特集が排尿障害関連領域の今後の発展の一助となれば幸いである. 2019年10月 |
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ISSN: | 0015-5691 |