特集 脳機能とその破綻に対する時間・階層縦断的アプローチと治療戦略 序文
我々ヒトの脳には, 情報を長期間に渡り保持できる能力が備わっている. その一方で, 加齢に伴う認知機能低下やうつ病などの精神疾患の発症率上昇が知られている. 超高齢化が進みつつある現代においては, 「脳機能の老化や長期記憶のメカニズムの解明, 及びそれらの成果に基づく治療・予防戦略の構築」は, 社会的にも大きな需要のある, 重要性・緊急性の高い研究分野である. しかし, 長期的な時間経過と脳機能との関連性については, 研究の困難さとも相まって, 多くの点が未解明である. そこで筆者らは, 第89回日本薬理学会年会(横浜)に於いて公募シンポジウム「脳機能とその破綻に対する時間・階層縦断的アプロー...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2017-11, Vol.150 (5), p.217-217 |
---|---|
Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 我々ヒトの脳には, 情報を長期間に渡り保持できる能力が備わっている. その一方で, 加齢に伴う認知機能低下やうつ病などの精神疾患の発症率上昇が知られている. 超高齢化が進みつつある現代においては, 「脳機能の老化や長期記憶のメカニズムの解明, 及びそれらの成果に基づく治療・予防戦略の構築」は, 社会的にも大きな需要のある, 重要性・緊急性の高い研究分野である. しかし, 長期的な時間経過と脳機能との関連性については, 研究の困難さとも相まって, 多くの点が未解明である. そこで筆者らは, 第89回日本薬理学会年会(横浜)に於いて公募シンポジウム「脳機能とその破綻に対する時間・階層縦断的アプローチと治療戦略」を企画し, 特長的なモデル系・手法を用いて, 長期記憶・老化・脱成熟などの時間的要素と関連付けながら認知・情動などの脳機能とその破綻に関する最新の研究成果について発表・討論する機会を得た. 本特集号では, このシンポジウムにて御講演いただいたシンポジストおよび共同研究者の先生方に, それぞれの発表内容に関連深いトピックスを中心とした総説をお願いした. 東京理科大学基礎工学部の瀬木(西田)恵里先生には電気けいれん刺激による海馬神経の成熟制御と精神疾患の新たな治療戦略について, 大阪大学生命機能研究科の小倉明彦先生, 冨永(吉野)恵子先生らには, ストレスの記憶への影響を細胞レベルで解析するためのインビトロモデル系について解説していただいた. また, 東北大学薬学研究科の森口と福永浩司先生らはKATPチャネルを標的としたアルツハイマー病患者における認知機能障害への新たな治療戦略の可能性について, 京都大学薬学研究科の柿澤は活性酸素の中枢シナプス可塑性に及ぼす影響と老化への関与について解説している. 本特集のテーマである「長期的な時間経過と脳機能との関連性」に着目した研究が, 今後さらに発展することで, 長期的な時間軸を観点とした脳機能の理解が深まるとともに, これまでとは違う新たな切り口からの脳疾患の治療戦略の創出・確立へとつながることを期待してやまない. 2017年10月 |
---|---|
ISSN: | 0015-5691 |