3 膵B細胞における硫化水素産生と細胞保護作用
「要約:」硫化水素(H2S)は細胞で産生されるガス性のメッセンジャーであり, その作用は多岐に及ぶ. 私たちは膵B細胞を研究の対象としてH2Sの機能と産生調節について検討してきた. その結果, (1)このガスがインスリン分泌を抑制すること, (2)酸化ストレスを軽減することによって膵B細胞を障害から保護すること, (3)小胞体ストレスによる細胞死には影響を与えないこと, (4)グルコースによりH2Sの産生が増えることを報告してきた. さらに, (5)分泌刺激濃度のグルコースがH2S産生酵素であるcystathionine-γ-lyase(CSE)の発現を誘導することを発見した. ここで不思議な...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2012, Vol.139 (1), p.13-16 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「要約:」硫化水素(H2S)は細胞で産生されるガス性のメッセンジャーであり, その作用は多岐に及ぶ. 私たちは膵B細胞を研究の対象としてH2Sの機能と産生調節について検討してきた. その結果, (1)このガスがインスリン分泌を抑制すること, (2)酸化ストレスを軽減することによって膵B細胞を障害から保護すること, (3)小胞体ストレスによる細胞死には影響を与えないこと, (4)グルコースによりH2Sの産生が増えることを報告してきた. さらに, (5)分泌刺激濃度のグルコースがH2S産生酵素であるcystathionine-γ-lyase(CSE)の発現を誘導することを発見した. ここで不思議なのは, なぜインスリン分泌刺激であるグルコースが, このホルモンの分泌を抑制するH2Sの産生を増すかである. これについて私たちは, 高濃度のグルコースによってもたらされる酸化ストレスや細胞内Ca2+の恒常的な上昇に起因する障害から, H2Sが膵B細胞自らを保護する安全弁の役目を果たす, と考えている. |
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ISSN: | 0015-5691 |