食後高トリグリセリド血症家兎(PHT)の開発経緯と生活習慣病モデルとしての有用性
血管病対策は21世紀の医療の重要な課題であり,血管病の原因は動脈硬化性変化である.動脈硬化の危険因子としては高コレステロール血症のほうが臨床的に重大である.しかし,虚血性心疾患を発症した全ての患者に高コレステロール血症を認めるわけではなく,むしろ他の危険因子(高トリグリセリド(TG)血症,耐糖能異常,肥満,高血圧等)を同一人が複数併せ持つ方が,虚血性心疾患を発症する頻度が高いことが報告されており,特に高トリグリセリド血症と虚血性心疾患との関係が注目されている.さらに,動脈硬化症を主要所見とする臨床例の中に,食後高脂血症を示す症例が知られており,血管病進展の重篤な危険因子と考えられている.著者ら...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2005, Vol.125(5), pp.301-306 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 血管病対策は21世紀の医療の重要な課題であり,血管病の原因は動脈硬化性変化である.動脈硬化の危険因子としては高コレステロール血症のほうが臨床的に重大である.しかし,虚血性心疾患を発症した全ての患者に高コレステロール血症を認めるわけではなく,むしろ他の危険因子(高トリグリセリド(TG)血症,耐糖能異常,肥満,高血圧等)を同一人が複数併せ持つ方が,虚血性心疾患を発症する頻度が高いことが報告されており,特に高トリグリセリド血症と虚血性心疾患との関係が注目されている.さらに,動脈硬化症を主要所見とする臨床例の中に,食後高脂血症を示す症例が知られており,血管病進展の重篤な危険因子と考えられている.著者らは,動脈硬化に対する血中のコレステロール高値の要因を排除するために,通常(絶食状態)は血中のコレステロール(CHO)とトリグリセリド(TG)が低値であり,食後にTGのみが異常高値を示す家兎(PHT: Postprandial Hyper Triglyceridemia,食後高トリグリセリド血症家兎)の分離に成功した.PHTはCHO代謝異常に依存しない新しい脂質代謝異常のモデル動物である.PHTの食後高トリグリセリド血症は,絶食時に100 mg/dl以下を示し,食後12~24時間で1,000 mg/dl以上のTG値を示す.制限食給餌(120 g/day)下でも食後TG値は1,000 mg/dlを超える.PHTの食後高トリグリセリド血症の発症時期は6ヵ月齢前後から顕著となる.また,PHTの雄性でより食後高トリグリセリド血症が顕著である.PHTの食後の血漿をリポタンパク分析した結果,VLDLの増加が顕著であった.PHTに糖負荷試験を行ったところ,耐糖能異常並びにインスリン抵抗性を認めた.PHTは野生型家兎(日本白色家兎)に比較して体型がやや小型だが,腹腔内脂肪の沈着が顕著である. |
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ISSN: | 0015-5691 1347-8397 |
DOI: | 10.1254/fpj.125.301 |