行動薬理概観~動物の行動は何を物語るか

実験心理学的な手法を用いて行動に対する薬物効果を調べる行動薬理学は,現在の薬理学の中で確たる地歩を築いている.しかしながら,分子生物学や脳科学が急速に発展している今日,その存在意義が根本から問い直されていると言えるであろう.本稿では薬理学とくに創薬の現場と結びついた研究の領域で,動物の行動実験を行うことにどのような意義があるのかを考えてみたい.そこでまず行動薬理学の草創期を振り返り,条件回避行動に対するクロルプロマジンの静穏効果の発見,オペラント行動に対する薬物効果の頻度依存性の発見,薬物依存研究における薬物自己投与実験の創造という3大重要知見の意義を考察する.次に創薬の現場における行動実験の...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2005, Vol.125(4), pp.219-224
1. Verfasser: 廣中, 直行
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:実験心理学的な手法を用いて行動に対する薬物効果を調べる行動薬理学は,現在の薬理学の中で確たる地歩を築いている.しかしながら,分子生物学や脳科学が急速に発展している今日,その存在意義が根本から問い直されていると言えるであろう.本稿では薬理学とくに創薬の現場と結びついた研究の領域で,動物の行動実験を行うことにどのような意義があるのかを考えてみたい.そこでまず行動薬理学の草創期を振り返り,条件回避行動に対するクロルプロマジンの静穏効果の発見,オペラント行動に対する薬物効果の頻度依存性の発見,薬物依存研究における薬物自己投与実験の創造という3大重要知見の意義を考察する.次に創薬の現場における行動実験の利用法について,(1)薬効薬理領域における動物モデルの考え方,(2)安全性薬理領域における行動テストバッテリーの組み方,(3)非臨床と臨床をつなぐ外挿の考え方について,筆者なりの見解を述べる.最後に,今後行動薬理学がいかなる方向に発展する可能性を宿しているか,脳科学や精神医学との関連を考える.
ISSN:0015-5691
1347-8397
DOI:10.1254/fpj.125.219