ミクログリアによるアミロイドβの貪食・分解およびその調節因子

アルツハイマー病(AD)脳では, 細胞外におけるアミロイドβタンパク質(Aβ)の蓄積により形成される老人斑が観察される. 老人斑にはまたミクログリアが活性化し集積している. 現在, 細胞外Aβの蓄積がAD発症メカニズムの上流に位置すると考えられているが, 集積するミクログリアの役割やAβとの相互関係は不明である. 脳内でAβプラークを形成するトランスジェニックマウスおよびAβ1-42(Aβ42)海馬実質内投与ラットを用い, Aβとミクログリアの関係を検討した. トランスジェニックマウス脳内では, Aβプラークの形成とその周辺での活性化ミクログリアの集積がみられた. また, Aβ42海馬実質内投...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2004, Vol.124 (suppl), p.75-76
Hauptverfasser: 高田和幸, 北村佳久, 下濱 俊, 谷口隆之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:アルツハイマー病(AD)脳では, 細胞外におけるアミロイドβタンパク質(Aβ)の蓄積により形成される老人斑が観察される. 老人斑にはまたミクログリアが活性化し集積している. 現在, 細胞外Aβの蓄積がAD発症メカニズムの上流に位置すると考えられているが, 集積するミクログリアの役割やAβとの相互関係は不明である. 脳内でAβプラークを形成するトランスジェニックマウスおよびAβ1-42(Aβ42)海馬実質内投与ラットを用い, Aβとミクログリアの関係を検討した. トランスジェニックマウス脳内では, Aβプラークの形成とその周辺での活性化ミクログリアの集積がみられた. また, Aβ42海馬実質内投与ラットでも同様の結果が得られ, さらに脳内Aβ42量は時間依存的に減少した. 近年, 我々はラット培養ミクログリアがAβ42を貧食し分解すること, heat-shock protein-90(Hsp90)がその機能を促進し, 反対に, high mobility group box protein-1(HMGB1)は阻害することを見い出している. Aβ42海馬実質内投与ラットでも, Hsp90の同時投与により脳内サイトカイン量の増加およびAβ42量の減少促進が観察された. ミクログリアの産生するサイトカインの一部が神経保護作用を示す報告もあり, ADにおいてミクログリアはサイトカインの産生やAβ貧食により神経保護に機能する可能性が考えられる. ミクログリアの機能やその調節因子に関する研究を基盤とした新規AD治療法の開発が期待される.
ISSN:0015-5691