PPARγをターゲットとした慢性炎症疾患の治療戦略

Peroxisome proliferator-activated receptor gamma(PPARγ)は, ステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーに属する核内転写因子であり, 脂肪細胞の分化やインスリン感受性だけでなく, 炎症や免疫反応にも深くかかわっていることが報告されている. 我々は「PPARγをターゲットとしたクローン病, 潰瘍性大腸炎などの慢性炎症疾患の治療」として, PPARγリガンド投与による炎症性腸疾患の抑制効果について動物モデルを用いて検討した. その結果, 予防的投与では著名な炎症抑制効果をもつPPARγリガンドが, 炎症惹起後の投与では有効性を示さないことを...

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Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2004, Vol.124 (suppl), p.49-50
Hauptverfasser: 和田孝一郎, 上崎善規
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:Peroxisome proliferator-activated receptor gamma(PPARγ)は, ステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーに属する核内転写因子であり, 脂肪細胞の分化やインスリン感受性だけでなく, 炎症や免疫反応にも深くかかわっていることが報告されている. 我々は「PPARγをターゲットとしたクローン病, 潰瘍性大腸炎などの慢性炎症疾患の治療」として, PPARγリガンド投与による炎症性腸疾患の抑制効果について動物モデルを用いて検討した. その結果, 予防的投与では著名な炎症抑制効果をもつPPARγリガンドが, 炎症惹起後の投与では有効性を示さないことを見出した. さらにこの原因として, 内因性抗炎症機構として作用している可能性のあるPPARγタンパク自体が, 炎症の慢性化によって減少していることも明らかにした. この炎症抑制の限界を克服するために, アデノウィルスベクターを用いたPPARγ遺伝子導入によるタンパクレベルでのPPARγの機能回復と, PPARγリガンド投与による慢性難治性炎症の治療を試みた. 炎症性腸疾患マウスにアデノウィルスベクターを用いたPPARγ遺伝子導入を行い, 慢性炎症におけるPPARγ減少を正常レベルまで回復させた. このタンパクレベルでのPPARγの回復によってある程度の抗炎症効果が認められたが, さらにPPARγリガンドとの併用によりマウスで腸炎の抑制効果, 死亡率の劇的な減少が認められた. これらの結果は, 近年報告されたヒト炎症性腸疾患でのPPARγレベルの減少や, 臨床試験におけるリガンド投与効果の限界といった報告と相関するものであり, PPARγ遺伝子導入とリガンド投与との併用による慢性炎症性腸疾患治療への臨床応用を期待させるものである.
ISSN:0015-5691