役に立つ研究と役に立たない研究と,そしてハイテクとローテクと

手元の(といってもweb上に置いてあるのだが)国語辞書によると, エッセイとは"形式にとらわれず, 個人的観点から物事を論じた散文. また, 意の赴くままに感想, 見聞などをまとめた文章"とある. 我田引水と, そして羊腸とも言うべき話の曲折をお許しいただきたい. 鶏胚心筋 30年も前のことである. 古臭い話である. 我乍ら年をとったものである. 当時鶏胚心筋の発生に伴うチャネルの変化を研究していた. 興味を持つ人もいたとみえて, 結構話をする機会があった. そういう時に決まって出てくるのが, "そういう研究は何か役に立つんですか"という質問であった....

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本薬理学雑誌 2004-07, Vol.124 (1), p.62-63
1. Verfasser: 重信弘毅
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:手元の(といってもweb上に置いてあるのだが)国語辞書によると, エッセイとは"形式にとらわれず, 個人的観点から物事を論じた散文. また, 意の赴くままに感想, 見聞などをまとめた文章"とある. 我田引水と, そして羊腸とも言うべき話の曲折をお許しいただきたい. 鶏胚心筋 30年も前のことである. 古臭い話である. 我乍ら年をとったものである. 当時鶏胚心筋の発生に伴うチャネルの変化を研究していた. 興味を持つ人もいたとみえて, 結構話をする機会があった. そういう時に決まって出てくるのが, "そういう研究は何か役に立つんですか"という質問であった. 傑作なことに, "小児科の薬でも作ろうとしているんですか"と訊かれたことがある. 小児科の薬って何だろう. それにしても, 薬学に身をおいていると, 修士や博士の論文発表会などで相当な頻度で遭遇するのが, "君のその仕事はどういう役に立つのかね"という質問であった(継続を表わす現在完了形のつもり). 今大きな変貌が避けられない薬学にあって, 仮に細々とでも研究が存続したとしても, ますます実学の度合いを強めるであろうことに一抹の寂しさを感じるが, これは本稿の主旨ではない.
ISSN:0015-5691