オピオイド受容体の分子薬理学的研究
筆者らはκおよびµオピオイド受容体cDNAのクローニングを起点として,オピオイド受容体に関する分子薬理学的研究を行ってきた.まず,遺伝子工学的手法により作製した種々のキメラ受容体および点変異導入型受容体を用い,受容体サブタイプ選択性に関わる受容体構造の研究を行い,µ選択的アゴニストであるDAMGOが,第1細胞外ループと第2膜貫通部位の境界領域に存在するµ受容体のアスパラギン残基(µN127)とそれに対応するδ受容体のリジン残基(δK108)の僅か1残基の相違によりµ/δ間を識別していること,µ/κ間識別には,第3細胞外ループと第6および第7膜貫通部位との境界領域に存在する4アミノ酸残基が重要で...
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Veröffentlicht in: | 日本薬理学雑誌 2004, Vol.123(2), pp.95-104 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 筆者らはκおよびµオピオイド受容体cDNAのクローニングを起点として,オピオイド受容体に関する分子薬理学的研究を行ってきた.まず,遺伝子工学的手法により作製した種々のキメラ受容体および点変異導入型受容体を用い,受容体サブタイプ選択性に関わる受容体構造の研究を行い,µ選択的アゴニストであるDAMGOが,第1細胞外ループと第2膜貫通部位の境界領域に存在するµ受容体のアスパラギン残基(µN127)とそれに対応するδ受容体のリジン残基(δK108)の僅か1残基の相違によりµ/δ間を識別していること,µ/κ間識別には,第3細胞外ループと第6および第7膜貫通部位との境界領域に存在する4アミノ酸残基が重要であることを明らかにした.また,クローン化µ,δ,κ受容体を発現する細胞株を樹立し,それら細胞株を用いて,拮抗性鎮痛薬やジヒドロエトルフィン,KT-90,TRK-820などのオピオイド作動薬の薬理学的性質を明らかにした.さらに,脳,脊髄および後根神経節でのオピオイド受容体mRNAの発現分布を明らかにするとともに,一次感覚神経におけるµ,δ,κ受容体mRNAと痛覚情報伝達物質サブスタンスPの前駆体mRNAとの共存を調べ,サブスタンスP産生細胞の大部分がµ受容体を発現しているが,それと比較し,δあるいはκ受容体を発現しているサブスタンスP産生細胞は少ないことを示した.最近では,痛みにより惹起される不快·不安などの負の情動反応の分子機構に関する研究を行い,ホルマリンによる持続性疼痛により扁桃体基底外側核でのグルタミン酸遊離が増加しNMDA受容体を介した神経情報伝達が亢進することにより嫌悪反応,すなわち,負の情動反応が惹起されること,扁桃体基底外側核内に投与されたモルヒネは,グルタミン酸作動性神経にシナプス前性に作用しグルタミン酸遊離を抑制することによりこの負の情動反応を抑制することを明らかにしている.今後は,そのようなオピオイドの情動反応に対する作用の分子機構の解明を糸口に,痛みによって惹起される負の情動反応の神経機構と物質的基盤の解明に取り組んでいきたい. |
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ISSN: | 0015-5691 1347-8397 |
DOI: | 10.1254/fpj.123.95 |